◆女子高生対狂女。ブレブレの手持ちビデオキャメラの映像に妙なリアリティーを感じさせられる(50点)
この映画は劇場未公開映画です。評価の基準は未公開映画に対してのものとなります。
タイトルからしてZ級のにおいがプンプンしているが、本当にバカな映画だった。まずはDVDのジャケット。よくあることだが、映画と全く関係なし。美人でかっこいい女子高生たちが並んでいるが、本編には誰一人として、一切出てこない。
出てくるのは美人とは言い難いB級女子高生5人(それなりにはかわいい)。ドライブしているうちに人の車にぶつけてしまい、当て逃げするが、当てられた方が追いかけてくる。これが頭の変な女で、ショットガンを持って女子高生たちに迫る。そして女子高生たちを裸にして、服に小便をさせる。女が去った後、女子高生たちは小便まみれの服を着て反撃。女の車に大便を投げつける。その余りの汚さに嘔吐する女子高生。さらに狂った女は報復で女子高生の一人をつかまえ、歯を抜いたり股にドライバーを刺したり・・・と、あまりに下品なので書いているのが恥ずかしくなってくるようなストーリーが、ブレブレの手持ちビデオキャメラで撮影されている。
2006年製作の米映画。アルバトロスの配給で、監督はグレッグ・スウィンソン。女子高生の裸とか、スプラッター場面を期待してはいけない。暗くて、荒い画面で、ピントもあってないので、基本的には何にも見えない。そのおかげで、下品な場面もそれほど汚く感じず、残酷な場面もそれほど痛そうではない。恐らく限りなくゼロに近い予算で撮ったと思われる。ライティングも使わず、夜間撮影モードで撮られている。女子高生たちは素人っぽいし、キチガイ女がなぜ人を殺すのか、その理由も分からない。
それでも、というか、それ故に、奇妙にリアルなサスペンスが感じられる。キャメラは基本的に車の中から外に出ない。女子高生が車から引きずり出されて襲われる場面でも、あくまでも車の中から撮った映像のみが使われ、暗闇の中、何が起きているのか分からないまま、女子高生の叫び声だけが聞こえる。そこで何故か、ハンガリーの「映像の魔術師」タル・ベーラの「倫敦から来た男」を連想してしまった。タル・ベーラの映画においても、ドアの向こう側で起きる殺人を追って、キャメラはドアの中に入っていこうとせず、ただ、外からドアを映し続ける。この事象との距離の撮り方がフィクションを超えたリアリティーを感じさせるのだが、「女子高生サバイバル・ドライブ」も、同じ事をやっているのである。
しかし、本作の場合は撮らなかったのではなく、撮れなかったのを逆手にとっているわけで、タル・ベーラと比較出来ないことは言うまでもない。女子高生たちが逆襲に転じるところなどは、タランティーノの「デス・プルーフ in グラインドハウス」(2007)、もっと言えば、その元ネタになったラス・メイヤーの傑作「ファスター・プッシーキャット キル!キル!」(1966)のようでもあった。
(小梶勝男)