女の子ものがたり - 福本次郎

友達だからこそ大切にし、友達だからこそ嫉妬し、友達だからこそ夢を託す。まっすぐな思いと捩れた感情を繊細に使い分け、小学校から大人になるまでの時間を共にした3人の女の子の人生と友情をしみじみとしたトーンで描き出す。(70点)

女の子ものがたり

© 2009西原理恵子・小学館/「女の子ものがたり」製作委員会

 しょぼい田舎街を出られずにしょぼい生活を送る人々。男たちは身勝手で、女たちは男に振り回される。そこから抜け出す方策も度胸もなく、ただなんとなく日々が過ぎていく。そんな大人たちの間で育ったヒロインが、同じような環境の友人と過ごすうちに唯一の希望となって故郷を後にする。友達だからこそ大切にし、友達だからこそ嫉妬し、友達だからこそ夢を託す。まっすぐな思いと捩れた感情を繊細に使い分け、小学校から大人になるまでの時間を共にした3人の女の子の人生と友情をしみじみとしたトーンで描き出す。

 家庭の事情で転校したナツミは、原っぱでキミコとミサに出会い仲良くなる。2人とも家は貧しく、学校でもいじめられている。高校生になっても3人の関係は続いていたがキミコはヤンキーになっていた。

 ナツミの継父は甲斐性なし、ミサの家族は狭いアパートに子沢山、キミコは父がおらず家は荒れ放題。まだ10歳くらいの子供なのに世間並みの幸福から見放された3人の日常は悲惨そのもの。それでも必死で「幸せになれますように」とおまじないを唱えるナツミがいじらしい。高校生になって、この街で暮らすことに諦めにも似た心地よさに浸っているキミコとミサに、ナツミはいつしか物足りなさを覚えている。恋人に殴られるキミコと両親が逮捕されたミサの姿に2人との距離を感じ、別れのときが近づいて来るという予感が、切なくもリアルに再現される。

 さらに、結婚したキミコ、同棲中のミサがともにDVに苦しんでいるのを知ったナツミは、不幸に目を向けないようにして生きている彼女たちと決定的な違いを見つけてしまう。ずっと友達でいたいけれど、ナツミだけでもこんな生活から抜け出して欲しいというキミコの気持ちが、絵の才能のあるナツミに対し「もうこの街に帰ってくるな」と言い放つシーンに凝縮されていた。楽しい記憶がほとんどなかった少女時代でも、大人になって振り返ると、そこには確かにきらきらとした純粋な思い出がある、そんなノスタルジーが強烈に胸を締め付ける作品だった。

福本次郎

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