女の子ものがたり - 山口拓朗

◆疎遠になった旧友に会いに行きたくなる(70点)

 スランプ中の女流漫画化、高原菜都美(深津絵里)は、昼間からビールを飲み、ソファで昼寝をする体たらくな日々を送っていた。ある日、新人編集者の財前(福士誠治)が自宅に来た。財前は菜都美に仕事をするよう焚き付けるが、菜都美は意に介さず、ソファに寝転がる。夢に出てきたのは、12歳のころの自分だった……。

 36歳の現在と少女時代を行き来するプロット。その大半を割く少女時代は「小学生時代」と「高校生時代」の2時代に分かれ、それぞれに同年代の子役や女優をキャスティング。年代ごとのリアリティを追求している。

 手あかにまみれた仕事を惰性で続けている現在と、不安と希望が交錯するエネルギッシュなティーンエイジャー。両者のコントラストの強さが、この映画の妙味だろう。コントラストの強さは、ノスタルジーの強さと言い換えてもいい。「ドキドキ」も「ワクワク」も「ヒリヒリ」もとうの昔になくしてしまったわ、という大人の心にこそ響く作品かもしれない。

 中心となる登場人物は、菜都美を含む3人の幼なじみ。映画は、家庭環境や個性もバラバラな3人の成長や挫折や友情をストレートに描く。子供らしい好奇心に満ちた楽しいエピソードばかりでなく、家庭環境がもたらす重たいエピソードや、無知と背伸びが招く痛々しいエピソードも多数並べられる。しかしながら、その一つひとつに深入りすることはなく、次から次へとアルバムのページをめくるかのように颯爽と駆け抜ける。そのテンポのよさが、本作「女の子ものがたり」のセンスといえよう。

 終盤、菜都美に訪れる幼なじみとの「別れ」の顛末は、なかなかどうしてヘビーである。が、そのシーンの重たさが、のちに、36歳の菜都美が故郷に戻ったときに知る「ある真実」の引き立て役となる。親友のひとりがかつて菜都美に放った辛辣な言葉が、そこに込められた本当の意味と共に、空っぽになりかけていた36歳の菜都美の胸に広がる。泣きどころである。

 どこかで自分を思ってくれている古い友人がいるかもしれない――。そんなあたたかい気分にさせてくれる映画だ。疎遠になった旧友に会いに行きたくなる人もいるだろう。

 風光明媚な愛媛県の田舎町。海の見える山道で3人の少女が自転車をこぐ姿が印象的だ。3人それぞれのイメージカラーに合わせて用意されたファッションや、高校生時代の菜都美が掘建て小屋に描いた壁画、いかにも漫画家っぽい36歳現在の菜都美の部屋など、ビジュアル的に楽しめる美術や装飾も、本作「女の子物語」の魅力である。

 青春期における悲喜こもごもや、そうした過去を透かしたときに見えてくる新たな希望を、ユーモアとシリアスを織り交ぜながら軽快に描いた「女の子ものがたり」。人生の機微が詰まった、せつなくもほろ苦いガーリー・ムービーだ。

山口拓朗

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