大脱出 - 青森 学

熱き魂の漢の映画!(点数 89点)


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今作はシルベスター・スタローン×アーノルド・シュワルツェネッガーの二枚看板が注目されるところなのだが、特筆するべきなのはこのビッグネームに負けぬほどシナリオが凝っているのだ。
自らが犯罪者として刑務所に入所し脱獄することで刑務所の問題を改善するセキュリティコンサルタントをスタローン(レイ・ブレスリン)が演じているのだが、そんな彼が指摘するセキュリティホールを克服した“完璧“な監獄へ彼自身が囚われてしまうというストーリー。

レイは脱出不可能な監獄でシュワルツェネッガー(エミル・ロットマイヤー)と共闘していくのだが、この信義に篤いのだけれど腹の読めないエミルの謎が動力となって物語を最後まで牽引していく。
またレイは刑務所を研究し尽くしておりその造形の深さは自著を物する程精通している。
それは『パノプティコン』や『監獄の誕生』に比肩するほど思索的な本だったのかもしれない。
その著書のなかで『ヒポクラテスの誓い』を引用しているあたり単なる技術的なトピックだけを扱った本ではなさそうである。
このようにレイは明晰な頭脳を持つ人物として描かれており、緯度を知るために六分儀を自作すると思えば現在位置を知るために『コリオリの力』を利用するなど相当に賢いのだ。

刑務所は思想犯で埋め尽くされており脱獄計画に加わるムスリムの囚人が登場してこのムスリムの侠気に胸を熱くさせられる。

目的のために信仰の違いを乗り越えて団結する熱い男のドラマであり、シナリオの面白さもあるのだが、それが第一というのではなく伏流する男の意志の前に圧倒されるのである。

シュワルツネッガーがヘリコプターに設えた銃座から機関銃を外して敵を撃つさまは往年のアクションシーンを彿々と思い出させ、まさに歌舞伎役者の見得を切るような決めのシーンに喝采が湧き起こりそうである。
このカットは確信犯的なシーンであった。

丸太のような腕を振り回して格闘するシュワルツネッガーとスタローンが放つ熱気は漢気度が高く熱涙ものである。

男たちの鬱屈したストレスが暴動となって刑務所内で爆発するプロセスは丁寧に描かれているし面白い。

キーパーソンが最後まで登場せずマクガフィンかと思いきや疑問もきっちり氷解する。

監獄ものが何故受けるのかというと、それは監獄が抑圧された社会を象徴するからだ。
監獄というのは人種・思想で差別されることなく犯罪者であれば平等に抑圧されるので、偏見を超えた紐帯が生まれやすい側面も有ると思う。
その状況下で生まれる友情や自由を獲得するための戦い、連帯感が現実と違って自然に描ける点にある。
監獄ものではベースとなるストーリーが社会の改変・糾弾なのでどうしてもリベラルテイストなストーリーになるのである。刑務所は一般社会をミニチュア化したもの、縮図と云える。

したがって刑務所は比喩的な場所であり映画としては格好の舞台である。

映画の舞台としての刑務所は様々なドラマを発生させる装置であると云える。

傑作と呼ばれるSFやアクション映画には決まって観客の共感を呼ぶ想いが詰まっている。
今作では男たちの熱き意志だ。信条・信仰を乗り越えて男たちが共闘していくさまに胸が熱くなるほどのシンパシーを感じる。

過去の名作といわれる“監獄もの”映画に殿堂があるとしたら、これが入っても言い過ぎではないくらいクオリティの高い作品である。

青森 学

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