大統領の執事の涙 - 樺沢 紫苑

人種差別は、そんなに昔の話じゃない!(点数 90点)


(C)2013, Butler Films, LLC. All Rights Reserved.

フォレスト・ウィテカー主演『大統領の執事の涙』を
3つのポイントで解説します。

一つ目のポイントは、「アメリカの歴史」。

7人の大統領に仕えた一人の黒人執事の実話に基づく、
感動のヒューマンドラマ。

ということで、黒人執事と大統領の心温まるエピソードが
描かれるのかと思いきや、それだけではありません。

アイゼンハワー、ジョン・F・ケネディ、そしてレーガン大統領まで。
黒人執事の目を通して、「キューバ危機」「ケネディ暗殺」
「ベトナム戦争」と、アメリカの近代史があたかも年代記のように
描かれていく。

そのスケール感が凄い!

そして、それは黒人の人権獲得の歴史にも重なっていきます。
奴隷解放後も続く人種差別、人種分離法への抗議、
フリーダムライドなどの公民権運動、そしてキング牧師暗殺。
激動の20世紀。それは、自由と平等の獲得の戦いの歴史
そのものであったことが、この映画を見るとよくわかります。

ポイント、2つ目は「つい最近」。

この物語のファーストシーン。
後に大統領執事となるセシルの少年時代。
そのシーンには、衝撃を受けます。

それは、1900年代の初頭にあたりますが、
セシルの良心は南部のプランテーションで綿花詰みの仕事を
していて事実上、奴隷的な扱いを受けていた、というシーンです。

リンカーンの奴隷解放宣言は1862年ですが、
学問のない元黒人奴隷は肉体労働に従事するしかなく、
そのままプランテーションで働き続けたものも少なくないという。

リンカーンの奴隷解放から、真の意味での奴隷解放、
黒人の自由と平等の獲得というのは、50年。
いや100年以上もかかっているのです。

今、黒人初のオバマ大統領が生まれて、
ようやく真の意味での自由と平等が実現したのではないかと。

人種差別の時代。それは、ずっと昔の話ではない。
今と連続した、つい最近の話なのだ!
ということを、この映画を見るとよくわかります。

ポイント、3つ目は「父子関係の回復」。

大統領執事セシルと大統領との心温まるエピソード。
もうひとつ、セシルと家族の関わりも見どころです。

セシルが仕事に情熱を傾けるほど、家族と過ごす時間がなくなり、
妻とも疎遠となり、子供たちとの関係も険悪になる。

日本人にありがちな、「家族よりも仕事中心」のスタイルが、
大きな歪を産んでいくのです。
激しくなる長男との確執。そして、断絶。

対立した父と子。その関係は、修復できるのか、できないのか。
「父性」というのが、この映画の見どころの一つになっています。

黒人の人種差別の問題。
日本人にとってはあまり興味のないことかもしれませんが、
今の自由と平等と平和が、多くの人が「流した血」と
犠牲の上に存在している、ということは日本人である私達も、
知っておくべき価値があると思います。

樺沢 紫苑

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