大洗にも星はふるなり - 小梶勝男

◆テレビの深夜番組としては面白いかも知れないが、映画館で見るにはちょっとキツいコメディー。山田孝之の怪演が見どころ(64点)

 映画とテレビの違いは何だろうか。数年前から、いつも考えている。「フレフレ少女」の渡辺謙作監督にインタビューしたとき、聞いてみると、映画では観客は集中して見ているので、説明しすぎるとキツいという。だから、もう少し見せてもいい、というところの手前でカットを割るのだと言っていた。「フレフレ少女」はその言葉通り、映画らしい映画になっていたと思う。

 では、本作はどうだろうか。監督・脚本はテレビ「33分探偵」の演出・脚本や、「逆境ナイン」の脚本などを手がけた福田雄一だ。私は、「33分探偵」も「逆境ナイン」も好きだ。それなりに期待はしたのだが、結果的には「これを映画にする必要はないのでは」と思ってしまった。渡辺謙作さんの言う「キツさ」を感じてしまったのだ。

 茨城県・大洗の「海の家」でひと夏のアルバイトをした面々が、クリスマスイヴの夜、再び「海の家」に呼び集められる。みんなが憧れていたマドンナ・江里子(戸田絵梨香)が「イヴの夜に会いたい」と手紙を送ったからだ。ナルシストの杉本(山田孝之)、サメマニアの松山(山本裕典)、浮気がしてみたいという猫田(ムロツヨシ)、お調子者の仁科(小柳友)、海の家のマスター(佐藤二朗)の5人が集まったが、誰が江里子の本命なのか、勝手に争い始める。そこに、「海の家」の取り壊しを求めて弁護士(安田顕)が現れ、5人の勝手な思い込みを次々と論破する。

 「キサラギ」や「悪夢のエレベーター」のようなワンシチュエーション・コメディーを狙ったのだろうが、ストーリーが弱い。まず恋愛の勘違いを謎解きのように延々と弁護士が指摘していくのが物語の中心で、面白い部分もあるのだが、引っ張って描く題材として、恋愛の勘違いというのははどうだろうか。まあ笑えなくはないが、基本的にはどうでもいいように思ってしまう。

 繰り返しの笑いもスベリ気味だ。全くつまらないというわけではない。でも、こっちもしつこくやるほどのものとは思えなかった。

 何より、映像がキツかった。テレビならともかく、映画館の巨大スクリーンで見るには、動きもなさ過ぎるし、密度もなさ過ぎる。これを深夜のテレビで見たら、もっと面白かったのかも知れない。しかし、映画館という集中した空間に耐えられる映像ではないと思う。

 劇場では結構笑っていた人もいたので、コメディーとして悪いわけではない。ただ、映画を見た気はしなかった。

 特筆すべきは山田孝之の弾け方だろう。「MW?ムウ?」の神父役など、暗いイメージがあった彼だが、最近は「鴨川ホルモー」や本作のように、コメディーにいい味を出している。基本的に表情が暗いから、バカをやっても調子に乗りすぎたようには見えないし、他の出演者のバカな行動への「突っ込み」役には相応しいと思う。また、戸田絵梨香を回想場面だけにしか出さなかったのは良かった。現実の女性が出てこない方が、バカな男たちの「思い込み」の物語が輝いて見えると思う。

 作品のテーマは、青春の象徴としての「海の家」が永遠に続いて欲しいという願望、すなわち青春へのノスタルジーだろう。それはセリフによって分かるのだが、絵(場面)として、青春の輝く瞬間を描いて欲しかった。

小梶勝男

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