生きる希望を伝えたいという願いが感じられる(70点)
映画美術の巨匠・木村威夫の初長編映画は、生きる希望を伝えたいという願いが感じられる。映画学校の学院長の木室は、感受性が鋭い学生・村上や老いた妻エミ子との日々の中で、若き日の戦争の記憶を蘇らせていく。過去を振り返るパートは、独特の美術でまるでアートのよう。妻が作る写真のコラージュも印象に残る。戦争で散った命の無念を想い、現代社会になじめず壊れていく若い命に対し「生きてくれ」と切望する主人公は監督の分身だ。繰り返し登場する巨木の瘤(こぶ)は、喪失感と共に確固としてそこにある生の象徴に思える。各界から集った俳優陣が豪華。
(渡まち子)