もっと今の時代を感じさせてくれる新しさを見せてほしかった。(点数 40点)
(C)2011「夜明けの街で」製作委員会
恋のときめき、秘密を共有する愉しさ、ばれたらどうしようというス
リル。一方で、嘘をつき通さねばならない後ろめたさ。誰も傷つけな
いようにうまく立ち回っているつもりでも、結局はどこかで破たんし
てしまう危うさが端正なカメラワークで掬い取られる。映画はそんな
“不倫”の甘い地獄に堕ちた男の心の変化を軸に、一線を踏み越えて
しまった男と女の繊細な心情を描く。
【ネタバレ注意】
大手ゼネコン課長の渡部は、泥酔した派遣社員の秋葉を送った時に上
着を汚されたのをきっかけに、彼女と密会を重ねる。ある日、秋葉は
実家で起きた時効寸前の殺人事件の真相を渡部にほのめかす。
「不倫するやつなんてバカだと思っていた」。渡部の独白が象徴する
通り、いかにもな展開が待ち受ける。メールでのやり取り、ゴルフや
出張といった見え透いた言い訳、クリスマスイブのアリバイ作り、バ
レンタインデーの逢瀬etc。それらのエピソードは、これまでの不倫ド
ラマで散々見飽きたシチュエーションばかりだ。そして秋葉を選べば
可愛い娘と従順な妻を捨てる決断を迫られる渡部の逡巡なども、細か
く再現するほど既視感にとらわれる。
そのあたり、もっと今の時代を感じさせてくれる新しさを見せてほし
かった。また渡部の態度があまりにも真面目。不倫するやつがバカな
のではなく、不倫にのめり込むやつがバカなことをこの男は知るべき
だった。
(福本次郎)