園子温監督初のバイオレンス・コメディにおののき笑う (点数 75点)
©2012「地獄でなぜ悪い」製作委員会
ヤクザの組長の愛娘ミツコ(二階堂ふみ)は幼少時代にハミガキ粉のCMで一世風靡をした過去を持つ。劇中CMのキャッチとなる歌(全力歯ギシリ Let’s GO♪)とダンスが本作の魅力のひとつでもあることから、31種のはみがき「ブレスパレット」とのコラボにより「ガガガはみがき」が誕生!←これは実話。
さて、商業映画監督を目指す平田(長谷川博己)が、ある時ヤクザの組長 武藤(國村隼)と敵対するヤクザの組長(堤真一)に協力するのですが、それはヤクザの抗争殺戮大団円を映画化するというものでした。ヤクザの組長武藤は獄中にいる妻(友近)の夢である、元少女CMアイドルの娘(二階堂ふみ)の主演映画を完成させることで武藤は何としてもその夢を叶えたかったのです。
ライバルヤクザの組長 堤真一は幼少アイドル時代の二階堂ふみの大ファンだったことから、抗争もヘンテコな按配になっていくのです。
終盤の抗争シークエンスは園監督らしく相当エグいのですが、キャメラのファインダーを通して見る道化役とも言える長谷川博己の視点で抗争を俯瞰視し怖面白く、また35mmフィルムへのノスタルジーや映画創りへの情熱まで感じられ結果本作のレイティングがPG12に落ち着いたのではなのでしょうか。
園子温と言えば『愛のむきだし』『冷たい熱帯魚』『ヒミズ』などノンストップ爆裂演出が冴える快作がありますが、本作は笑いを挟みこんで冷や汗をかかずに後味も悪くない仮作に仕上がり、トロント国際映画祭ミッドナイト・マッドネス部門で観客賞を受賞しました。
余談ですが、劇中に登場する自主映像製作集団「ファック・ボンバー」とは、園監督がぴあフィルムフェスティバルのスカラシップで初の商業映画として製作した『自転車吐息』を撮っていた頃に実際に名乗っていたものです。
■2013年 日本映画/監督・脚本:園子温/出演:國村隼、長谷川博己、星野源、二階堂ふみ、友近、堤真一
オフィシャルサイト:http://play-in-hell.com/
(中野 豊)