団地妻 昼下がりの情事 - 福本次郎

◆濡れていないのに挿入しようとする夫に失望した妻。彼女の心に隙間にすっと入り込む男。古い団地を舞台に、必然のごとく出会ったふたりが求めあう姿を通じ、不況や孤独にさいなまれる低所得者層の暮らしをリアルに再現する。(50点)

ネタバレ注意! この批評は結末に触れています。

 残業続きで遅くまで家に帰ってこない上、たまにその気になっても濡れていないのに挿入しようとする夫に軽い失望を感じている妻。近所に住むのは老人ばかりで、悩みを打ち明けられる同世代の友人もおらず、家事の合間につい妄想にふけり股間をまさぐってしまう。彼女の心に隙間にすっと入り込む風のように現れた男もまた、胡散臭い仕事と年頃の息子に手を焼きながら生きる希望をなくしかけている。物語は古い団地を舞台に、必然のごとく出会ったふたりが胸の空白を埋めるために求めあう姿を通じ、不況や孤独にさいなまれる低所得者層の暮らしをリアルに再現する。

 清香は夫との性生活に不満気味。ある日、浄水器のセールスマン・哲平とはずみでセックスしてしまう。売れ行き不振で会社をクビになった哲平はその後も密かに清香を訪ね、体を重ねていく。

 ふたりきりになった清香と哲平は貪り合うように求めあうが、その後隣人が残していったベビー用品で赤ちゃんごっこをする。哺乳瓶を口に含み、ベビーパウダーを振りかけ、おむつまではく。それは流産したばかりの清香にとっては手の届かなかった未来であり、反抗期の息子が愛らしかったころを懐かしむ哲平にとっては置き去りにしてきた過去である。お互い精いっぱい甘え合うことで渇ききった現在を少しでも潤そうとする。はかない人生の一瞬を切り取った美しいシーンだった。

 20歳前後のAV女優がピチピチした体で本番をしているDVDが市中に出回っている中、性行為そのものを直截的に描くのではなく、男と女の心理のゆらめきを中心に据えているのはあくまで映画というジャンルにこだわっているからだろう。清香を演じる高尾祥子の熟れた果実のような裸も新鮮。性の喜びを知りつつ、満たされない肉体を持て余す女の感情を見事に表現していた。そして、専業主婦の清香にとって浮気は一時の気まぐれにすぎず、すべてを失いかけ彼女への思いが本気になってしまった哲平に厳しい現実を突きつけるラストも切ない余韻を残した。

福本次郎

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