哀しき獣 - 佐々木貴之

本作は既にハリウッドでのリメイクが決定されているとのことだが、ハリウッド製はこのオリジナルを超えることが可能なのか?!(点数 85点)

『チェイサー』で監督デビューしたナ・ホンジン監督による待望の長編第二作目。上映時間140分の力作で、『チェイサー』以上に面白い作品として仕上げることに成功した。

中国領延辺朝鮮族自治州に暮らすタクシードライバーのグナム(ハ・ジョンウ)は、妻を韓国に出稼ぎに行かせる際に作った借金に加え、賭け麻雀で大負けして更に大ピンチに!!そこで、裏社会の顔役として知られる犬商人ミョン(キム・ユンソク)から「借金をチャラにする代わりに韓国である男を殺害するように…」と取引を持ちかけられる。
グナムは音信不通の妻に会えるかもという思いもあって、密航船で黄海を渡り、密入国者として韓国に渡るのだが…。

とにかく最後までスリリングな展開で観る者を引き込ませ、とことん圧倒させてくれるのだ!!
グナムが警官やパトカーに追われるシーンから本作の面白さが一気に爆発する。
二台のパトカーはグナムという獲物を捕らえるべく仲間である警官もフッ飛ばして暴走。
とにかく劇中で観られる追跡シーンはスピーディーかつアップテンポで描かれているため、ハラハラドキドキを存分に味わえる。
これに加え、カーチェイスに車が続々とぶつかりまくるカークラッシュ、トレーラーの豪快な大横転といったパワフルなアクションシーンも見応えバツグンで更なる面白さを発揮している。

アクション以外では、何と言っても血生臭さが強烈な残酷バイオレンス描写の数々である。
ミョンが手斧を武器に人々を殺しまくって部屋の一室に血みどろの遺体がゴロゴロと倒れ込んでいたり、包丁で斬りつけるどころかメッタ刺しにしたりという具合に痛々しい上にグロさ丸出しのスプラッター風味は、観る者を恐怖と気持ち悪さのどん底に突き落とすこと必至だ!!

主演のハ・ジョンウは明らかに男前ではないし、最強の男や超人的ヒーローという感じではないものの多数の追っ手から力ずくで逃げ回り、重症を負っても図太く生き抜く。
これがリアリティーを感じさせ、ドラマを面白くさせている一因でもある。
一方でキム・ユンソクの悪役ぶりも極悪性を最大限に発揮し、凄味のある恐怖を感じさせる。
最終的にはこの二人の男のバトルとなるが、直接的な格闘や肉弾戦は描かれないものの、男臭い野郎二人が繰り広げる男同士の激突がしっかりと描かれているのである。

本作は既にハリウッドでのリメイクが決定されているとのことだが、ハリウッド製はこのオリジナルを超えることが可能なのか?!
また、ナ・ホンジン監督の次回作は、本作を超越するようなハードコアな作品に仕上げられるのか?!

佐々木貴之

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