君のためなら千回でも - 岡本太陽

マーク・フォースターが世界中で感動を巻き起こした小説を映画化(70点)

 アメリカ在住のアフガニスタン人作家カーレド・ホッセイニの書いた『君のためなら千回でも(原題:The Kite Runner)』という小説がある。この作品は2003年にアメリカで出版になり、300万枚を売り上げる大ベストセラーになった。現在では38カ国以上で出版されている。アメリカに住むアミールが故国アフガニスタンに赴き、過去の自分の犯した罪の償いをするストーリーが世界で感動を巻き起こした。

 そしてこの『君のためなら千回でも』が映画監督マーク・フォースターの手で映画化された。マーク・フォースターはドイツ生まれスイス育ちだが、人生で初めて観た映画フランシス・フォード・コッポラの『地獄の黙示録』に影響されニューヨークで映画を学んだ。そして2001年、死を描いた静かでかつ力強い彼の監督作品『チョコレート』でブレーク。その年度のアカデミー賞でハル・ベリーに主演女優賞をもたらした。また、次の作品のジョニー・デップ主演『ネバーランド』では自身がゴールデン・グローブ監督賞にノミネートされた。そして現在もまた『君のためなら千回でも』でゴールデン・グローブ賞外国語映画賞にノミネートされ、話題をさらっている。

 出版される本がサンフランシスコの自宅に届いた2000年のある日、アミール(ハリド・アブダラ)は1本の電話を受ける。それは父の友人ラヒム・ハーン(ショーン・トーブ)からだった。彼は20年も祖国アフガニスタンから離れているアミールにパキスタンにいるので会いに来て欲しいと告げる。そして「まだやり直せる道がある」とアミールに言い残す。時はさかのぼり、1978年、アフガニスタン、カブール、街では子供達がいつもの様に凧上げで遊んでいた。そしてその中に幼い頃のアミールとハッサンもいた。ハッサンはアミールの家に使える召使いの息子だが、アミールとハッサンは生まれた時からいつも一緒、彼らは親友だった。だが、街の凧上げ大会の日、アミールとハッサンのチームはその大会で優勝するものの、彼らの友情に一生傷を作るある事件が起きる。それからアミールはハッサンに対し、罪の意識を感じる様になる。そしてソ連がアフガニスタンを侵略しはじめ、裕福だったアミールは父と共にアメリカへと亡命するが、罪を償えないままハッサンとは生き別れになってしまう…。それから20年が経ち、ラヒム・ハーンから電話を受け、もう1度我が身を振り返るアミール。彼はラヒム・ハーンに会うためパキスタンに向かう。しかしアミールはそこで、ある衝撃の事実を知る事となるのだった…。

 このカーレド・ホッセイニ原作の小説はアフガニスタン人により初めて英語で書かれた小説だという。物語の中の主人公アミールもアフガニスタン出身、米国在住の作家で、ホッセイニ自身の境遇と重なる。彼もクーデターとソ連軍侵攻によってアメリカに一家で亡命した身、このストーリーは実体験に基づいた部分もあるのだろう。

 また、この手の映画だと、いくらマーク・フォースターが監督だとしても、キャストが地味になってしまう。特に子供時代のアミールを演じるゼキリア・エブラヒミ、子供時代のハッサンを演じるアフマド・ハーン・マフムードザダ、ハッサンの息子を演じるアリ・ダネシュ・バクティアリの主要の子役3人は全員アフガニスタン出身で、この映画で俳優デビューしている。しかし、この映画の半分が子供時代、この演技経験のない彼らだからこそ物語の純粋さや人の想いの不偏さを伝えられるのかもしれない。決して上手ではない演技だが、彼らがこの映画の中で一番輝いていた。しかし、困った事に彼らがアメリカの映画に出演してしまった事で、母国にはもういられなくなったという。特にハッサン役のアフマド君はレイプシーンがある為、その状況は速やかに対応されるべきだったそうだ。なぜならアフマド君の住む地域の人々は『君のためなら千回でも』を皆読んでおらず、彼らはただアフマド君がレイプシーンのあるセックス映画に出演したと思い込んでいたからだ。現在映画に出演した子役達とその家族はUAEに在住している。また、製作のパラマウントが彼らの18歳までの養育費と、その家族を養う費用を負担するということに同意しているという。日本だったらまずありえなさそうだが、ハリウッドは映画のためならなんでもするのだ。

 それから、マーク・フォースターが監督した『ネバーランド』を観た人なら分かると思うが、映画の中に空中を回転する様な映像がある。それがなんとも幻想的で不思議な感覚を生ずる。その手法が今回『君のためなら千回でも』の中では凧上げに生かされている。空中で飛び回る凧の映像はこの映画の中での見どころの1つ。凧上げといっても『君のためなら千回でも』はただ凧上げをして楽しむものとは違う。これは戦いなのだ。凧と凧同士の戦い。まるでアクション映画のカーチェイスシーンの様なスピード感があり、これが映画の中でスパイスとして良い効果を生み出している。

 感動的な人間ドラマが得意なマーク・フォースター。今回も、子供の頃に犯した罪の償いを誓うという感動の物語。なんとなくそのフレーズからキーラ・ナイトレイ主演の『つぐない』を思い浮かべてしまいそうだ。『君のためなら千回でも』は確かに、マーク・フォースターの前作『主人公は僕だった』と前々作『ステイ』に比べれば、内容的にも見応えがあるが、作品自体の強さには欠ける。一生背負ってきた罪の償いの物語のはずだが、少々爽やか過ぎた。あまり映画好きではない人が観たら感動できる作品かもしれない。ところで、このマーク・フォースターだが、次回作はなんとダニエル・クレイグ主演の『007』の22作目。『クラッシュ』の監督ポール・ハギスが脚本のリライトにあたるらしいが、マーク・フォースターとポール・ハギス、この2人が一体どんな『007』を作るのだろうか。そしてマーク・フォースターはどこへ行こうとしているのだろうか…。

岡本太陽

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