君が踊る、夏 - 渡まち子

君が踊る、夏

© 2010「君が踊る、夏」製作委員会

◆映画は安易な難病ものではなく、悩みながら生きる主人公・新平が、故郷の祭りを通して自分らしい生き方を模索する物語になっている(60点)

 挫折しながらも追いかける夢。好きな人を思い続ける気持ち。高知よさこい祭りの高揚感。それらをミックスして、病と闘う少女の実話を単なる難病ものだけに終わらせず、さわやかな青春映画に仕上げている。高知出身の新平は、東京でプロのカメラマンを目指して厳しい修行の日々を送っていた。5年ぶりに帰郷した新平のもとに、別れた恋人の香織が会いに来て「一緒によさこい祭りに出てほしい」と懇願する。難病を患う香織の幼い妹・さくらの生きる支えがよさこい祭りなのだ。最初はとまどったが、新平は、かつてのチーム「いちむじん」を再結成し、踊りの練習を始める…。

 「いちむじん」とは土佐の言葉で“一生懸命”の意味だと言う。発病して5年以上生存した例がないという悪性腫瘍の病を抱える少女が、よさこい祭りを生きる支えに、奇跡的に5年以上闘病を続けているという部分が実話。だが映画は安易な難病ものではなく、悩みながら生きる主人公・新平が、故郷の祭りを通して自分らしい生き方を模索する物語になっている。重要なファクターであるよさこい祭りは、全国的に有名だが、その“前に進む”スピリットがストーリーと自然に重なっていくところが上手い。伝統だけにとらわれず、現代的な味付けがなされているよさこいの踊りは、パワフルでとても魅力的だ。数十名で構成されるグループの振付はチームワークが最も大切。誤解やわだかまりを乗り越えて、先頭で旗をふる“纏(まとい)”を務める新平の誇らしげな表情がいい。初めて化粧をした香織の、パッと花が開いたような笑顔にも魅了された。いよいよ祭りの本番が近づいたその時、東京から、新平の写真がコンクールの最終選考に残り、受賞式に出席しないと受賞が取り消されてしまうとの連絡が入る。その授賞式は祭り当日と同じ日だった。少女との約束、故郷への思い、恋と友情、何より祭りへの情熱から、自分にとって何が一番大切かを知った新平が、どんな答を出すかは、映画を見て確かめてほしい。クライマックス、鮮やかな衣装で華麗に着飾った人々が、パワフルな鳴子踊りを披露する場面は圧巻だ。懸命に踊りの練習を重ねたという若手俳優たちが気迫溢れる素晴らしいパフォーマンスを見せる。よさこいで一番大切なのは笑顔。この言葉が心に残った。

渡まち子

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