君が踊る、夏 - 福本次郎

君が踊る、夏

© 2010「君が踊る、夏」製作委員会

◆高知のよさこい祭りを舞台に、青春の夢を追う青年が難病の少女との約束の中で人生で大切なものは何かを問うていく。自分ひとりの名声と仲間と分かち合う喜びを秤にかけ、二者択一を迫られる主人公の成長していく姿がまぶしい。(50点)

ネタバレ注意! この批評は結末に触れています。

 動きを合わせた踊りは躍動感に富み、派手な衣装の裏地や扇の裏表を使って見せる様々な色彩の変化は視覚的に楽しませてくれる。若さあふれる肉体から発散されるエネルギーは自由と歓喜を表現し、一方で仲間と一緒に同じ目的に向かう過程で団結と友情を固めていく。映画は高知のよさこい祭りを舞台に、青春の夢を追う青年が難病の少女との約束の中で人生で大切なものは何かを問うていく。自分ひとりの名声と仲間と分かち合う喜びを秤にかけ、二者択一を迫られる主人公の成長していく姿がまぶしい。

 見習いカメラマンの新平は母の見舞いのために故郷の高知に帰る。かつて共にに東京に出ようといったまま別れてしまった元恋人の香織が、難病の妹・さくらの願いをかなえるためによさこい祭りに出場するメンバーを集めていると聞いて力を貸す。

 大志を抱いて東京に出たのに5年間も芽が出ず悶々とした日々を過ごす新平。新平と踊るのを希望にして病気と闘っているさくら。新平に対して呵責を感じながらもさくらのために周囲を説得する香織。3人の思いが複雑に交差する中で、己が必要とされていることこそ今やるべきことと新平は気付いていく。生き方に迷い、進むべき道を模索し、何をすべきか苦悩する、そういった新平の心の揺れが非常に共感できる。また、地元で就職する若者は現状維持という現実と折り合いをつけて暮らしているが、都会に出た若者は目標を達成し持続しけなければ成功したことにはならない。地方と東京の「夢」の格差を改めて知らしめられた。

 新平と香織の努力、友人の協力でダンサーが集まり、よさこい祭りに向けて新たな振り付けを猛練習するが、本番直前になって新たな問題が起きるのはお約束通り。だが、その難問が死というようなネガティブで湿っぽいシチュエーションでお涙ちょうだいの展開に持っていくのではなく、チャンスという前向きの出来事だったので良い方に予想を裏切られた。愛する人と信頼できる友人がいれば、東京にいなくても夢を追いかけられる、そんな後味の良さが残る作品だった。

福本次郎

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