劇場版TRICK 霊能力者バトルロイヤル - 福本次郎

劇場版TRICK 霊能力者バトルロイヤル

© 2010「劇場版TRICK 霊能力者バトルロイヤル」製作委員会

◆ダジャレとパロディ、謎解きまで、全編ユル~い展開にテンションは下がりっぱなし。ツッコまれるのが目的の小ネタと脱力感あふれるエピソードの数々は、観客の心をくすぐるのではなく、あえて寒さを感じさせるのが狙いなのか。(30点)

ネタバレ注意! この批評は結末に触れています。

 江戸時代の奇術師と蘭学者の因縁に始まり、「1Q84」をもじった主人公の著作タイトルやベタなダジャレ、過去のドラマ・映画の引用、そして手垢のついた謎解きまで、全編ユル~い展開に、見る者のテンションは下がりっぱなし。ツッコミを入れられることを目的としたとしか思えない瞬間芸のような小ネタからあまりにも幼稚な手品の種まで、脱力感あふれるエピソードの数々は、ストレートに観客の心をくすぐるのではなく、あえて寒さを感じさせるのが狙いなのか。その演出意図は悪くはないのだが、曲がりすぎて捕球できないナックルボールのように、笑いのストライクゾーンをはずしている。

 人里離れた寒村で代々村を守る「カミハエーリ」という霊媒師の後継者が募集される。胡散臭い霊能力者や宗教家と共に、マジシャンの奈緒子も応募する。そこに先代カミハエーリの血を引く村の青年・翔平にオブザーバーとして呼ばれた上田も合流し、参加者同士の命がけのバトルが始まる。

 カミハエーリ候補者の中で一番地味なオッサン・鈴木が、村に伝わるさまざまな仕掛けやマジックを使って競争相手を殺していくが、手口はバカバカしいほど稚拙。当然、最終的には奈緒子とも直接対決するのだが、そのシーンもクライマックスと呼ぶには程遠く、ただ火に囲まれるだけで危機感も緊張感もない。一方で本筋に絡んでこない矢部警部補の首を長く伸ばすなど、まったく意味不明だ。奈緒子が松平健扮する鈴木に「余の顔見忘れたか」と「暴れん坊将軍」風に一喝する場面など本来爆笑のはずだが、そこもあっさりスルーする。もしかして、そんなナンセンスなパロディの元ネタを探すのがこの映画の楽しみ方なのだろうか。

 唯一超能力らしい超能力・瞬間移動を美代子という女が見せるが、それすら双子という中学生でも思いつくトリックで、意表を突くアイデアへの期待を見事に粉砕する。テレビの深夜枠の番組を酒でも飲みながらダラダラ見るのがこの作品に対する鑑賞態度なのだろう、素面でスクリーンを凝視していることに苦痛を覚えた。

福本次郎

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