利休にたずねよ - 樺沢 紫苑

心理的距離が近すぎると人は傷つけ合う(点数 90点)


(C)2013「利休にたずねよ」製作委員会

壮絶な心理戦。
そして、それを支える迫真の演技。
映画『利休にたずねよ』は、とても見応えのある作品でした。

利休が切腹させられるに至った真の理由は何だったのか? 
というサスペンス仕立て。と思いきや、
恋愛映画的な意外なおもしろさもあり、
先が読めません。

最初は、利休が秀吉を助けることもしばしばあり、
秀吉と利休の関係は親密なものでした。

それが、秀吉が出世し天下人となり、
利休もまた茶人として圧倒的な名声と権力を手に入れ、
それらがいつかぶつかりあう関係になっていきます。

利休は秀吉の良きコンサルタント、文化面での引き立て役と
なることもできたはずなのにそれを拒否した。

農民あがりの秀吉は、
「文化」や「美」に対する理解も乏しく、
逆にそれがコンプレックスとなって、
利休への憎しみへと変わっていきます。

この二人の心理戦というか、
命がけの駆け引きに引き込まれました。

私は、この映画を見て心理学用語の
「ヤマアラシのジレンマ」という言葉が頭をよぎりました。

「ヤマアラシのジレンマ」とは、
寒い中、二匹のヤマアラシが暖め合おうと近づきます。

しかし、近づきすぎるとお互いの体の針が相手に
刺さってしまいます。
一方で、離れると寒くなってしまう。

遠すぎてもダメで、近すぎでもダメ。
心の距離の取り方は、難しく、
距離が近すぎると傷つけ合うことになるのです。

例えば、恋人同士としてうまくいっていたのに、
結婚すると喧嘩ばかりになってしまったという
新婚夫婦がいます。

結婚すると、心理的な距離がより近づくために、
今まで見えなかった相手の欠点などがよく見えるようになって、
言い争ういや、喧嘩が増えたりします。

そんなときは、お互いのプライベートの時間を大切にしたり、
自分の交友や趣味を尊重しあう。
心理的に少し距離をおくとうまくいきます。

秀吉と利休も、
まさに「ヤマアラシのジレンマ」の関係。

政治は政治、文化は文化と、それぞれ頂点を極めた者同士、
尊重し合えば、共存繁栄できたはず。

しかし、秀吉は「文化」でも頂点をとらないと
気がすまなくなっていき、利休は政治的発言をしたり、
政治の分野にも介入していきます。

難しいです。

私たちの周りでも、「親友」や「最良のビジネス・パートナー」
だったはずが、関係が近くなりすぎたせいで、
対立し、大喧嘩し、決別してしまうような話はよくあるはずです。

戦国時代の自分とは無関係な話では済まされない。
人間関係の難しさの本質が、研ぎ澄まされて
描かれている。

考えれば考えるほど、引き込まれる映画です。

樺沢 紫苑

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