純粋な若者の思いを応援したくなる作品だった。 (点数 50点)
(C) 2011「僕たち」フィルムパートナーズ
満ち足りているけれど何かが足りない。不満はないが期待していた学
生生活とは違う。そんな、人生に違和感を覚えている若者が確かな手
ごたえを求めて疾走する姿は好感が持てる。世界を変えようなどと思
い上るのではなく、ほんのわずかでもいいから足跡を残したいという
身の丈に合った願望。それでも、一度決めた以上は最後まであきらめ
ずにゴールを目指す姿勢が素晴らしい。資金集めの困難の中で、己を
信じ仲間と助け合う大切さをこの映画は教えてくれる。
【ネタバレ注意】
医大生の甲太は、ある日「カンボジアに小学校を建てる」ポスターを
見て一念発起、基金を募るためにサークルを作る。目標額の150万円を
集めるイベントを始める一方、カンボジアに視察旅行に出かける。
そこで目にしたのはポル・ポト時代の負の遺産。強制収容所の血塗ら
れた歴史を雄弁に語る狭い独房や足枷、おびただしい数の頭蓋骨に甲
太たちは大きな衝撃を受ける。地方ではいまだに除去しきれていな地
雷のせいで発展が遅れ、屋根のない小学校に子供たちが通っている。
ここに来て初めて甲太は為すべきことの重大さを知り覚悟を決める。
それまで甲太たちはカンボジアがどんなところでどんな過去を持って
いたのかもほとんど知らなかったのだ。そのあたり、あまりの動機の
軽さに唖然とするが、きっかけなんか何でもいい、とにかく動き出す
のが肝心なんだと物語は訴える。純粋な若者の思いを応援したくなる
作品だった。
(福本次郎)