借りぐらしのアリエッティ - 福本次郎

借りぐらしのアリエッティ

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◆小人という、閉じられた世界の住人が人間と出会った時の恐れと驚き、そして心の交流を通じて、“信じること”とは何かを問う。サイズは人間の1/10以下なのに日々の生活は人間とかわらない、そんな彼らの日常に親しみを覚える。(50点)

ネタバレ注意! この批評は結末に触れています。

 床下から壁の隙間に入り、釘の階段を登ってロープを伝い食器棚の裏にある秘密の扉からキッチンに入る。ありふれた古い家の内部を動き回るのは小人たちにはスリルに満ちた大冒険。特に好奇心旺盛な少女にとって、人間の暮らしは刺激にあふれ目にするモノすべてが新しい。映画は閉じられた世界の住人が外界の人間と出会った時の恐れと驚き、そして心の交流を通じて、“信じること”とは何かを問う。サイズは人間の1/10以下なのに日々の生活は人間とかわらず、妖精のように空を飛べるわけでもなく魔法を使えるわけでもない、そんな彼らの日常に親しみを覚える。

 病気療養のために叔母の古い家にやってきた翔は庭で小人の少女を見かける。夜、父と共に“借り”に出たその少女・アリエッティは、ティッシュを取ろうとして翔に気づかれてしまう。

 ネコやカラスが危険な捕食動物になる小人から見た家の庭先。ガマガエルに食べられた親戚もいるらしい。しかし、最も危険なのは彼らと同じ言葉を話し同じ文化を持つ人間であるという皮肉。アリエッティには楽しい“借り”も、実は命がけの仕事であると父親は身をもって教える。また、人間に見られてはいけないという掟は一番大切なのだが、アリエッティは翔に会いに行く気持ちを抑えきれない。一方、病気がちな翔にしてみればアリエッティが初めて自分に興味を持ってくれた異性なのだろう。その、お互いに己の想いをうまく相手に伝えられないぎこちなさが初々しく微笑ましい。

 やがて、お手伝いのハルに見つかったアリエッティたちは叔母の家から出ていく羽目になる。別れの瞬間、アリエッティは翔の人差し指を抱きしめて胸の内を伝える。決して結ばれない種族を越えた愛、それは生きる希望を失いかけていた翔に手術を受けて病気に立ち向かう意思を与えることで結実する。映画としては劇的な場面は少なく展開も予想通りながら、メッセージ性を薄めて説教臭さが少なくなったのは好感が持てる。だが、この物語を受け入れるには幼児のような無垢な心が必要なのも確かだ。

福本次郎

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