代行のススメ - 小梶勝男

◆「誰かの代わりになる」ことをテーマに運転代行業を営む家族とその周囲を淡々と描く人間ドラマ。新人・山口智の監督・脚本で、山田辰夫はこれが最後の主演作となった(62点)

 ショートショートフィルムフェスティバル日本部門でグランプリを受賞した山口智が脚本・監督を務めた人間ドラマ。今年(2009年)7月に死去した山田辰夫にとって、最後の主演作となった。

 小学校に勤める産休の代理教師・木村カヨ(藤真美穂)は、産休の教師が戻ってきたため仕事を失う。同時に、夫が前の彼女とよりを戻したため離婚して、実家に戻ることになる。もう誰かの代わりにはなりたくない、と思う彼女だが、実家の仕事は運転代行業だった。母が病気で倒れたため、仕方なく家業を手伝うことになるが、父(山田辰夫)はスナックのママと浮気をしていた。

 山口監督は代行業一家とその周囲の物語を、安易に人物に寄らず、ロングや中ロングの絵を中心に撮っている。それが、ちょっと距離を置いた視線となっている。その距離の置き方が見ていて心地良かった。

 ロケ地は群馬県中之条町。特別にきれいな景色が出てくるわけではないが、キャメラは地方の町らしい落ち着いた雰囲気を、日常の中でしっかりと捉えている。

 しかし、ストーリーはこなれていない。「誰かの代わり」だった主人公が代行業をやりながら、代わりのない自分を見つけるという話はとても分かりやすい。だが、登場人物が意外な縁でつながっているという偶然性が、いかにも物語のために作ったようなのだ。

 無論、物語のために作ったには違いないが、「いかにも」と思わせるのが良くない。淡々とした撮り方だけに、余計に気になってしまった。物語からテーマが浮かび上がってくるのではなく、テーマが先にあって、その解説として物語を見せられているような気がした。運転代行業にまつわるエピソードも、もっと面白く出来るのではないか。

 主人公カヨ役の藤真美穂は、自然な演技で物語の世界にピッタリとはまっていた。山田辰夫も、あの顔と声で普通の父親を演じて、いい味を出していたと思う。その一方で、物語の呼吸を乱すような奇矯な人物も登場し、時として全体のバランスが崩れてしまうのが惜しい。

小梶勝男

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