◆サスペンス・ホラーに相応しい斬新な映像(75点)
VFX界の巨匠と称され、数々の名作の特殊メイクを担当してきたスタン・ウィンストンの最後のプロデュース作品である本作は、毎日殺される青年の姿を描いた不条理なサスペンス・ホラーである。
イアン・ストーン(マイク・ヴォーゲル)はアイスホッケーの名選手であり、恋人ジェニー(クリスティーナ・コール)との関係も絶好調で充実した生活を送っていた。イアンが試合で敗北を喫した夜、帰宅途中に倒れている人物を助けようとしたその時、その人物に線路に押さえつけられあっという間に電車に轢かれて死んでしまう。死んだはずのイアンが目を覚ますと会社員としてオフィスにいる。そこには恋人であるはずのジェニーが単なる同僚として勤務している。その後、イアンのもとにグレイ(マイケル・フィースト)という謎の男から「君は狙われている」と告げられる。
とにかくユニークな設定と独特のストーリーが興味深い。主人公が毎日殺される理由と謎が注目すべきポイントだと言え、これらを理解するためには登場人物のセリフが重要で外せないことが言える。理由と謎が解明されるまでの描き方や展開も面白い。
監督はCM界出身のダリオ・ピアナで、長編映画の監督は本作が初体験である。そんな彼がサスペンス・ホラーに相応しい斬新な映像をとことん魅せつける。映像作りは秀逸であり、緊迫感や恐怖感をしっかりと醸し出した演出も素直に良く出来ている。これは、ダリオの腕前に加えてスタン・ウィンストンらの大きなバックアップがあったからこそだと断言できる。
低予算であるが、アイデアを活かせて魅せるべき部分をしっかりと魅せているのでしっかりと面白い作品に仕上がっている。87分という短めの上映時間がこれまた観易く思えて良い。ホラー好き、サスペンス好きは何が何でも必見だ。
(佐々木貴之)