◆イ・ガンジュンとぺ・テジンの熾烈な駆け引き=攻防戦が大きな見所であり、観る者をグイグイと惹きつかせる(75点)
韓国の骨董街、仁寺洞<インサド>。この街を牛耳るギャラリーのスゴ腕女オーナーのぺ・テジン(オム・ジョンファン)は、京都で発見された幻の名画「碧眼図<ピョンガンド>」の買い付けに成功する。もし、この絵の修復に成功すると莫大な利益が見込めるということで、ある事件を機に表舞台から姿を消していた“神の手を持つ男”と呼ばれる天才修復師イ・ガンジュン(キム・レウォン)を雇うが……。
「碧眼図」を巡って様々な人たちの、様々な思惑が交錯するサスペンス・ドラマ。イ・ガンジュンとぺ・テジンの熾烈な駆け引き=攻防戦が大きな見所であり、観る者をグイグイと惹きつかせる。
アクションやコメディーの要素も取り入れてサスペンスの面白さを引き立て、これが一級のエンターテイメントとして仕上がった要因にもなったと言っても良いだろう。中でも序盤で観られるアクションシーンは、劇中で描かれるサスペンス同様にスリリングに描かれ、スピーディーかつアップテンポな描写が何よりも秀逸だ。終盤近くでもアクションシーンが用意され、ド派手な感じではないものの醍醐味をしっかりと感じさせる。コメディー要素は薄味だが、これだけで十分と言い切っても良いほどだ!!
本作の魅力はサスペンスやアクションだけではない。何と言ってもオム・ジョンファン扮するぺ・テジンなのだ!! 時にはセクシーな衣装に身を包んでみたりと悪女らしいムードを存分に醸し出しており、主役であるイ・ガンジュンを喰ってしまうほど存在感は大き過ぎる。
監督・脚本はパク・ヒゴンで本作がデビュー作となる。見せ場作りをはじめとする演出力に長けており、脚本には三年間の歳月を懸けたということもあってストーリー展開もなかなか面白い。パク監督は、今後も面白いサスペンス、アクションで韓国映画界を索引していくだろう……。
(佐々木貴之)