◆カーチェイスから始まって建物の爆破、さらには航空機乗っ取りと息つく間もないの連続は一時もスクリーンから目を離せない。格差社会の問題点や政府高官の陰謀までが加わって、物語は複雑怪奇なミステリーの様相まで見せる。(50点)
カーチェイスから始まって建物の爆破、さらには航空機乗っ取りと息つく間もないシーンの連続は一時もスクリーンから目を離せない。そこに格差社会の問題点や政府高官の陰謀までが加わって、物語は複雑怪奇なミステリーの様相まで見せる。映画は、過去のハリウッド作品のエッセンスを織り交ぜながら、日本映画らしい人情も効かせ、ハイジャック機に乗り合わせたヒロインがその機転で犯人グループと渡り合う頭脳戦に、格闘や銃撃戦を交えて最後まで疾走する。
ショッピングセンター立てこもり事件を起こした主犯格の御堂は投降するが、腹心の中川はどさくさにまぎれて逃げる。中川は和樹・祐介兄弟と共にハイジャックを試み、御堂の釈放を政府に要求する。その飛行機には警視庁の腕利き交渉人・宇佐木が乗っていた。
犯人グループの用意周到なプランは二重三重にトラップが仕込まれていて、武器を持たない宇佐木も同僚刑事も手出しができない。そんな中、彼女はCAの制服を着て機長とコンタクトを取り、なんとか地上と連絡を付けようとする。その後も貨物室で中川や祐介とやり合うのだが、交渉人として相手のしぐさや表情、しゃべり方からプロファイリングを行って自分に有利な心理戦に持っていくのではなく、どちらかというと駆け引きよりも活劇に重点を置いてしまっている。そのあたりは観客を退屈させない配慮だろうが、もう少しプロの交渉術を見たかった。
ただ、昨今警戒厳重な機内にあれほど簡単に銃器や爆弾を持ちこめるものかは疑問。また、御堂は悪徳政治家の刺客から身を守るために警察に捕まったのだろう、ならば釈放されることを望んでいなかったはず。その意図を中川は知らずにハイジャック計画に加担したのか。政治家は元秘書ごと飛行機を落とすつもりだったのだろうが、和樹と祐介は使い捨てにされるとしても、彼が送り込んだ4人目のハイジャック犯の逃走経路は不明。きちんと伏線を張り、細かい部分を丁寧に描いてほしかった。
(福本次郎)