二重スパイ - 前田有一

◆『シュリ』を期待していってはいけない(60点)

 『シュリ』『JSA』に続く、南北分断の悲劇を描いた、ハン・ソッキュ主演の韓国映画。

 ハン・ソッキュという俳優は、韓国においては、すべての脚本はハンを通るということわざがあるくらい(ちょっと嘘)の大スターだ。

 本人はいたって平凡な優等生タイプの人で、たぶん歌舞伎町ですれ違っても気づかないんじゃないかと思うくらい親しみやすそうな感じの俳優さんだが、記者会見なんかにいくと、質問する記者(多分韓国人)の声が歓喜に震え、やたらと上ずっていて「ああ、彼は本当に本国ではカリスマなんだなあ」としみじみ思わされる。

 さて、話を『二重スパイ』に戻そう。この映画、巷では、エンターテイメント大作かのようにいわれているが、実際は地味でマジメなドラマである。エンターテイメント性はほとんど無く、『シュリ』のような派手な銃撃戦も無いし、劇的な恋愛もない。だが、南北分断による悲劇のドラマとして見れば悪くはない。退屈せず、2時間3分見れるだけのものはある。

 物語は、韓国に潜入した北の2重スパイが、北にも帰れなくなって女と逃げる、というもの。男女が恋に落ちる説得力が薄く、物語のために恋に落ちているように見えるのが難点だ。

 ただ、実在の国と歴史を題材に描いているだけに、退屈はしない。終わってみれば、あまりに意外性が無いので、「これだけか……」と、不満が残るかもしれないが。

 いずれにしても、主に韓国国内向けであることは間違いない。朝鮮半島に興味があって、エンタ性のない長いドラマを楽しめるという人であれば、鑑賞してもいいだろう。逆に、『シュリ』的な派手な韓国作品を期待していくと、間違い無く外すと思われる。

前田有一

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