九月に降る風 - 福本次郎

クラスも学年も違う7人の少年たちは共通の目的に向かって力を合わせているのではなく、無為に過ごす時間を仲間と共有しているだけだ。友情にひびが入り、決定的な決裂ののちそれぞれが自らの道を選んでいく過程での成長を描く。(50点)

九月に降る風

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 クラスも学年も違う7人の少年たち。学校でも放課後でもいつもつるんでいる。しかし、彼らは共通の目的に向かって力を合わせているのではなく、ただ無為に過ごす時間を仲間と共有しているだけだ。特に主人公となる少年は青春のきらめきや恋の苦悩も控えめで、むしろストイックなまでに内向的。その一方で些細なことで傷つき壊れる関係は、若さゆえのエネルギーの爆発というより、微妙なこじれを根に持つという非常にウエットな感情。7人の友情にひびが入り、決定的な決裂ののちそれぞれが自らの道を選んでいく過程で少年たちの成長を描く。

 同じ高校に通う男子7人組はプロ野球の応援で騒ぎを起こし、学校から注意を受ける。ある日、リーダー格のイェンが他校の女子をナンパしたことでグループが因縁をつけられ、イェンの身代わりにタンが殴られる。それをイェンが茶化したことからタンは怒り、グループと距離を取り始める。

 ポケベルで呼び出されればすぐに集合し、学校で声をかけられれば取り込み中でも仲間を優先する。その結束を誇ることで自分たちのグループがある種の「特別な存在」と勘違いしている彼ら。タバコを吸い、バイクに乗り、騒ぐことでしか自己表現できない幼稚さと共に、そんな甘えがいつまでも許されないのも分かっている。特に唯一の優等生・タンが仲間の馬鹿さ加減に愛想を尽かしながらも渋々付き合っているという様子が、中途半端で煮えきらない高校生の実像をリアルに表現している。

 廖敏雄というプロ野球選手は台湾人にとって90年代のアイコンだったのだろう。グループが球場に応援に行ったり、イェンがサインボールを偽造したり、とばく疑惑が報道されたりと、廖の活躍と疑惑が物語の折々に登場する。それはグループの輝いていた友情が陰り始めるのと時を同じくする。最後にタンが投げた偽サインボールを廖が打つシーンは、タンにとって、親友の死と仲間との別れという大人への通過儀礼。過去との決別と卒業が一人前の男の顔になったタンの姿を際立たせていた。

福本次郎

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