三国志英傑伝 関羽 - 小梶勝男

 ドニー・イェンが見せるソード・アクションが素晴らしく、ドラマとしても見応えのある秀作(点数 77点)


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 昨年はドニー・イェンが大活躍した年だった。日本での劇場公開作が「イップ・マン 葉問」「イップ・マン 序章」「孫文の義士団」「レジェンド・オブ・フィスト 怒りの鉄拳」「導火線」「処刑剣 14BLADES」と続き、いずれも最高レベルのアクションを見せた。
作品的にも「イップ・マン」シリーズや「孫文の義士団」は優れた出来映えだった。
トニー・ジャーが映画製作のトラブルで姿を消し、ジャッキー・チェン、ジェット・リーの両雄がアクションを押さえ気味な方向に進んでいる今、香港クンフーアクションのトップ・スターといっていいだろう。

 今年もその勢いを感じさせるのが本作だ。中国4大奇書の一つ、「三国志」の中で、人気の高い武将・関羽の活躍を描いたエピソードを映画化している。

 後漢末期。曹操(チアン・ウェン)の捕虜になった関羽(ドニー・イェン)は、捕虜でありながら戦で曹操を助け、信頼を得ていく。関羽は部下になるよう曹操に説得されても、主人である劉備への忠誠を変えない。劉備の許嫁(スン・リー)を連れて劉備の下へ向かうという関羽に、曹操は関所を無事、通過させると約束する。だが、曹操の命令にもかかわらず、関羽らは道中、命を狙われる。

 脂の乗りきったイェンのアクションは、本作でもたっぷりと披露される。長い髭をたくわえ、怪力で、青龍椻月刀という独特の刀を使ったとされる関羽。イェンは力強く、キレのいいソードアクションで、歴史のファンタジーを見事に現実のものとして見せる。
ここでは、いつもの高速パンチや連続回し蹴りは封印し、破壊力を強調した重みのある刀のアクションで観客を魅了する。
その面白さ、痛快さ。自分の身についた技ではなく、役柄に合わせてアクションを大胆に変えるという点では、イェンのクンフー「演技」としても優れている。そのアクションをダイナミックに見せるカメラワークも巧みだ。

 ドラマにも単純な善悪にとどまらない深みがある。人の良さも、強さも、冷たさも、弱さも、すべてかいま見せ、関羽にひかれながら、為政者として信じる道を見失わない曹操を、チアン・ウェンが人間味たっぷりに演じている。中国映画には背景となっている物語が分からないと理解しにくい作品もあるが、これはストーリーがすっきりしていて、「三国志」を知らなくてもすんなりと作品世界に入っていけるだろう。

小梶勝男

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