一枚のハガキ - 福本次郎

生を愛おしむ美しさと死なねばならなかった無念を通じて戦争の愚かさ批判する(点数 60点)


(C)2011「一枚のハガキ」近代映画協会/渡辺商事/プランダス

前線に向かう仲間から預かったハガキと彼のメッセージを託された男
は、約束を果たすために未亡人のもとを訪ねる。貧乏だったけれど楽
しかった夫との思い出を偲ぶ彼女と、軍隊での暮らしを語る男。凡百
の作品で描かれてきた、生を愛おしむ美しさと死なねばならなかった
無念を通じて戦争の愚かさ批判する姿勢を、この映画はじっくりと構
えたカメラに収めることで強烈に浮き彫りにする。そこには扇情的な
音楽はなく、ただ囲炉裏をはさんで向き合って座る、淡々と言葉を吐
き出す男と感情を抑えきれない女の姿があるだけだ。

【ネタバレ注意】

太平洋戦争末期、“中年兵”として召集された松山と森川。森川は、
妻から届いたハガキを松山に渡し、「このハガキは読んだ」と伝えて
くれと言い残してフィリピンに送られる途中戦死する。

戦後、電気も水道もない家にひとり住む友子は村の団長に口説かれて
いるが、妾は嫌とつれなくしている。突然現れた松山に団長は面白い
はずはない。蹴り殴り投げる、マンガのコマのようなカットの連続、
せっかく殺し合いの世の中は終わったのに、友子をめぐって争う男た
ちの姿が滑稽だ。

中年兵の中で、誰が戦地に送られ誰が内地に残るかはくじで決められ
る。選ばれる=死、くじで生死が決まってしまう命の軽さの自覚は、
戦争という大きな時代のうねりに飲み込まれるというよりも、運命に
は逆えない諦観をもたらしていた。

福本次郎

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