ホームドラマもちょっと設定を変えれば立派なスリラーになるという見本(点数 80点)
(C)Universal Pictures.
疎遠だった祖父母と一時でも暮らす居心地の悪さをスリラーの視点で読み解いたもの。
多くの人が感ずるであろう長く疎遠になっていた肉親と出会った時のあの気まずさをシャマラン監督はスリラーとして上手くまとめている。
ホームドラマに付帯する居心地の悪さの核心を突いているように思う。
家族の仲睦まじいドラマを観ている時、えも言われぬ違和感を感じる人の心理の深層にはきっとこういった、想像するにもおぞましい悪夢が隠されているのだ。
この作品にはプロットの面白さだけに注目するのではなく、人間の集合的な潜在意識をすくい取って見せたことに功績がある。
決定的な伏線を本編の早いうちから開示しているので、ズルをされずに正攻法で騙された後味が残るので、清々しいくらいの、してやられた感がある。
この作品はシャマラン監督にはお決まりのオチが生命の作品なのであまり多くを語れない。
ただ、映画の仕掛けとしてはかなりイージーな方なので、勘の良い人は直ぐに気が付くのだろう。
オチを見破ったとしてもそれをネタに一緒に見た友人と語り合うのも良し。
作品そのものよりも映画を見た後の友人との語らいが楽しくなりそうな作品だ。
シャマラン監督自身もこれからは小気味の良い小品を手がけていくと宣言しているように、走り書き的なアイディア勝負の作品を作ってくれるように思う。
振り返ってみればシャマラン監督の作品には無理に大作感を出す必要が無い。
ウィットの利いたアイディアというスパイスさえあれば客の舌を唸らせる逸品が作れるのである。
今作はシャマラン監督の原点回帰と言われる作品ではあるが、コンパクトにまとめていくプロットは低予算でも傑作を撮り続けたヒッチコックを彷彿とさせる。
シャマラン監督が現代のヒッチコックと成り得るか今後の動向を注視していきたい。
(青森 学)