ヴィクトリア女王 世紀の愛 - 福本次郎

◆女の子ならだれもが夢見るプリンセス。しかし、王女の日常は軟禁状態に等しく、しきたりや決まりに縛られ、自由になりたいという思いだけが募っていく。そんな息が詰まるようなの宮殿内のディテールがリアルに再現されている。(60点)

ネタバレ注意! この批評は結末に触れています。

 女の子ならだれもが夢見るプリンセス。しかし、実際に王女に生まれしかも王位継承権第一位にあるヒロインにとっては、宮廷での日常はまさに軟禁状態に等しい。しきたりや決まりに縛られ、階段を下りるのにも侍女の手を借り、就寝も母と一緒。常に誰かに監視され、行動を指図され、自由になりたいという思いだけが募っていく。そんな息が詰まるようなの宮殿内のディテールが非常にリアルに再現されている。映画は、権力とカネ、政治家や貴族の強欲に翻弄されながらも断固として自分の意思を貫いて、19世紀英国を空前の繁栄に導いた女王の若き日を追う。

 時期女王のヴィクトリアは、母と母の愛人・コンロイに「摂政令」にサインを求められるが拒否、日々の生活はますます重苦しくなる。ある日、ベルギー王の命を受けたアルバートがヴィクトリアの夫の座を狙って彼女に近づくが、お互い正直な気持ちを打ち明けあって急速に惹かれあっていく。

 後に夫となったアルバートが取り組んだ宮廷内の改革が目を引く。宮殿の窓の外側と内側では管轄が違うために窓ふきが徹底されないとか、暖房の管理の権限がないとかいった因習に拠った莫大な経費の削減に手を付ける。また、コンロイのような王室の寄生虫を追い出し、支出を抑える。まさに「仕分け人」のような手際で無駄遣いをなくし財政を健全化させる、現在の日本にはタイムリーなエピソードだった。

 王子なら、国王直々に帝王学を教え込むこともできただろうが、ヴィクトリアは国王の姪で、なかなか会う機会もない。まるで籠の中の鳥のような環境で、利権を狙う者たちの専横を止めようとする。そのためには母との断絶もいとわない一方で、首相のメルバーンを個人秘書に抜擢。この辺り、私欲で動くも者と国益のために働く者を見分ける嗅覚をヴィクトリアは身を付けているのだが、彼女がどのようにそうした知恵を付けたのか具体的にみせて欲しかった。政治家・貴族・実業家、国王とはそういう輩を含め清濁併せのむ器量が求められるが、ヴィクトリアはしがらみを捨てて王室の権威の立て直しに取り組もうとする。まだまだ未熟だが、大志を抱いた女王と夫が国家と国民に身をささげる、彼女の求めていた真の自由とは、自らの良心と善意に従い、実行することなのだ。

福本次郎

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