ロンゲスト・ヤード - 小梶勝男

◆映画の面白さが全て詰まった傑作。私にとっての映画の教科書(92点)

 この作品は、とても思い出深い。私が(親や友達と一緒でなく、)初めて一人で劇場へ行って見た映画なのだ。小学校3年生のときだったと思う。当時、映画館は不良なども集まる怖い場所で、一人で見に行くのは不安だったが、その不安以上に、見たい気持ちが大きかった。この映画を見て、映画が大好きになった。それ以来、ずっと映画ばかり見ている。そんな人生は世間の役には全く立たないが、自分なりに幸せといえるかも知れない。

 かつてはフットボールの花形プレーヤーだったポール(バート・レイノルズ)は女のヒモに落ちぶれ、挙句の果てには刑務所にぶち込まれてしまう。刑務所長(エディ・アルバート)は看守たちでセミプロのフットボール・チームを作ろうとしており、ポールにコーチを依頼する。断られると、今度は練習台となる囚人チームを作ることを命じる。そして看守チームと囚人チームの練習試合が行なわれる。日頃からお互いに対立していた囚人たちも看守を倒せるということで一致団結、立ち向かっていくが、ポールは八百長で負けるよう、密かに命じられていた。もし負けないと、重い刑を課すと脅されていた。

 ロバート・アルドリッチは今でも一番好きな監督だ。ここには私が考える映画の面白さの全てが揃っている。主人公がチームを作るために囚人たちを一人ずつスカウトしていく場面は、黒澤明の「七人の侍」のようだ。囚人たちの面々も、よくこれだけの連中を集めたと思わせるほどの、不敵な面構え。そして、主人公の元フットボール選手としての、ダメ男の最後のプライド。余計な描写は一切なく、ラストの1ヤードに向かって、話がトントンと進んでいくのが非常に痛快だ。果たして主人公は八百長に応じるのか、試合の行方はどうなるのか。フットボールのルールなど全然知らなかったが、そんなことはまるで関係ない。様々な対立関係にハラハラして、最後にはバカな男たちの意地と根性に、胸が熱くなる。若きバート・レイノルズのタフガイぶりも最高だった。

 特別に変わった撮り方や、ひねったストーリーがあるわけではない。この場面にはこの描写しかないというふうに、常に最良の表現がとられていると思う。私にとっては映画の教科書のような作品だ。

小梶勝男

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