◆謎だらけ、美人だらけのベルギー製密室推理劇(70点)
ベルギー国民の10人に1人が見たというヒット作。5人の男が浮気の場所として共有していた部屋で、手錠をかけられた女の死体が発見される。部屋に集まった男たちは、疑心暗鬼の中で事の真相を探り合うが……。
『unknown アンノウン』(06)や『キサラギ』(07)と同様、1つの部屋に集まった者たちの会話から、徐々に事実が明かされていくという趣向。提示されていく手がかりの中には、真相への伏線もあれば、単なる目くらましもあり、一筋縄では先が読めない。5人の男の過去や人柄が丁寧に描き分けられているために、彼らの対立や腹の探り合いから無理なくドラマが派生する。死んだ女の正体は? 5人の中に殺人鬼がいるのか? 浮気された妻たちの復讐なのか?……と、観ている私たちの興味も最後まで途切れることがない。二転三転する意外な結末に、「だまされた快感」を味わうとしよう。
日本の2時間ドラマなどでは、配役の一覧を見ただけで「こいつが犯人だ」とわかってしまうケースも少なくないが、幸いこれはベルギー映画。日本でなじみの俳優は1人として出ていない。犯人どころか主役が誰かさえ中盤過ぎまでわからなかったのは、いいことなのか悪いことなのかちょっとビミョーだが。
それにしても5人の男たちの妻役をはじめ、出てくる女優陣が皆、きれい。清純系、毒婦系、やせ型、ポッチャリ型と、まるで各種の美人の見本市だ。日本ではジャン=クロード・ヴァン・ダムとダルデンヌ兄弟の名前ぐらいしか知られていないベルギー映画界だが、なかなか隅に置けませんな。
(町田敦夫)