よく出来たストーリーで最後まで楽しめるスペイン製スリラー(点数 70点)
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スペイン・バルセロナで毎年10月に開催されているホラーやファンタジーの祭典が、シッチェス映画祭だ。
かつては「シトヘス」とも呼ばれていた。
1968年創設の伝統ある映画祭で、ホラーファンにとっては憧れの場である。
しかし、スペインまで行く金も暇もない。
幸いなことに、昨年から日本で、映画祭公認の上映会「シッチェス映画祭ファンタスティック・セレクション」が行われるようになった。今年も映画祭から6本がセレクトされて公開される。
これはその1本。
「ロスト・アイズ」の脚本を手がけたオリオル・パウロが脚本と監督を務めるスペインのホラー色の濃いスリラーだ。死体安置所からマイカ(ベレン・ルエダ)という女性の死体が忽然と消える。
夫のアレックスは、実はマイカを毒殺していて、死体消失で犯罪が露見しそうになる。
「ロスト・アイズ」も秀作だったが、こちらも面白い。
ストーリーがよく出来ている。死体消失という謎から始まり、スリラーとして展開し、ラストには強烈などんでん返しが待っている。
奇妙な出来事が続き、アレックスはマイカが生きているのではないかと疑い始める。
疑心暗鬼に陥るアレックスの心理が恐ろしく、犯罪を暴こうとする警察との攻防がスリリング。
観客もアレックスと同様に様々なことを疑うが、謎が謎を呼んで最後まで緊張感は途切れない。
マイカを演じたベレン・ルエダは金持ちの中年女性の嫌らしさを表現しつつも妖艶な魅力をふりまき、ドラマに厚みを与えていた。
派手なスプラッターシーンはなく、キャストも地味だが、十分に楽しめた。
(小梶勝男)