ロストクライム -閃光- - 渡まち子

◆当時の時代背景と警察組織内のタブーをえぐりながら進んでいく(60点)

 昭和最大の未解決事件を追う刑事が、巨大でどす黒い闇の中に、その執念ごと呑みこまれるクライム・サスペンスだ。異様な犯罪は、過去と現代を揺るぎなく結びつけ、関わった人間を呪縛する。出世を夢見る若手刑事の片桐と、定年間近のベテラン刑事の滝口は、ある殺人事件でコンビを組むことに。傍若無人な滝口の振る舞いに困惑しながらも、その事件の被害者が三億円事件の犯人グループの一人と分かったことから、恐るべき真相に辿り着く。と同時に二人は、警察組織の中の陰謀に係る闇へと引きずり込まれていくことになるが…。

 証明済みの事実は正確に描くべきだが、未解明の事柄には想像の余地がある。ジョゼフ・ロージーの「暗殺者のメロディ」の冒頭の言葉だ。トロツキー暗殺を描くその物語では主人公は人間だったが、1968年に起こった三億円事件をひも解く本作の主人公は、犯人でも、罪を問われた警官でもなく、いつのまにか一人歩きした事件そのもののように思う。40年以上たってもなお昭和最大のミステリーとしてさまざまな憶測を呼ぶ三億円事件。本作は、当時の時代背景と警察組織内のタブーをえぐりながら進んでいく。三億円は現在の貨幣価値では 30億円以上。それを学生運動に燃える若者たちが華やかな手口で奪い取ったはいいが、彼らのその後の人生を大きく狂わせたとするのが、この物語の主軸だ。この設定には過剰なノスタルジーを感じさせ、三億円の行く末には過去を美化するロマンチシズムが垣間見えるが、面白いのはもう一つの軸である、警察内での陰謀の部分。十分に現代的なプロットであると同時に、本来対立するはずの若者たちと権力側が結局は同じ穴のむじなになっていく皮肉が効いている。さらに事件の真相を突き止めようとする二人の刑事を、本物の闇に引きずり込む異様なパワーもまた、強烈だ。三億円事件は結局犯人の特定ができずに1975年に時効が成立した。土砂降りの雨の中の現金強奪劇は、他の映画でも何度も見た光景だが、本作のリアリティは素晴らしい。華やかさはないが、全編に硬派でドライなタッチが効いた1本だ。

渡まち子

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