極限状態における人間のメンタルだけで一本の作品を作ってしまうそのアイデアに敬服した。 (点数 80点)
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まったくの運任せ、プレーヤーが感じる無限の恐怖と緊張がスクリー
ン全体に漲っていく……。サークル状に並んだ17人の男が、それぞれ
前に立った男の後頭部に銃口を当て、ランプの点灯と共にトリガーを
引く。6分の1、3分の1、2分の1、3分の2、回を重ねるごとに死の確率
が上がり、脳みそが吹き飛ばされるか否かはすべて偶然に左右される、
そんな命がけのゲームに駆り出された男の心情が手に取るようにリア
ルで、思わず息を詰めて椅子から身を乗り出してしまった。
父の入院費に困っていたヴィンスは耳にした儲け話に乗ってしまい、
郊外の豪邸に連れて行かれる。そこで目にしたのはロシアンルーレッ
ト大会、ヴィンスは否応なしに拳銃を握らされ、合図が出るのを待つ。
プレーヤーはゲームが進むにつれプレッシャーに耐えられなくなって、
喚き散らしたり、足がすくんだりもする。一方で初戦では怖気ずいて
いたヴィンスは2回戦、3回戦と進むにつれ己の強運を信じるようにな
る。自分の力ではどうにもならない状況で生き残るには腹をくくるし
かない、やけくその気持ちがヴィンスの表情から滾りだしていた。
金持ち連中が、他人の殺し合いを見物して賭けの対象にするという非
常に悪趣味な設定なのだが、カメラはヴィンスの生存本能に焦点を当
てることで、不快さをいつのまにか忘れさせてくれる。なにより、極
限状態における人間のメンタルだけで一本の作品を作ってしまうその
アイデアに敬服した。
(福本次郎)