アメンボだって ネコだって……。みんなみんな生きているんだ、ともだちなんだ。(点数 75点)
(C)2012 レンタネコ製作委員会
オフビートな名作 『かもめ食堂』の荻上直子監督の新作です。
本作は、人と猫の「出会い系リアル」を生業(なりわい)というか趣味にしている主人公サヨコ(市川実日子)と出会う人々の心の交流を描いたライトコメディです。
河川敷近くの平屋に住むサヨコのまわりはネコだらけ。やっぱりネコが好きなサヨコが「うざい」のは謎の隣人・小林克(子)だけだったりします。寂しがり屋ではないと信じこむサヨコは、心寂しき人に猫を貸し出すという仕事をしているのです。
♪ネコはいかがですか~?レンターネコ、ネコ、ネコ♪
・劇中一番目のお客様
ある日、上品な老女・吉岡(草村礼子)に声をかけられ、レンタネコから14歳のトラ猫をチョイス。サヨコは猫を育てる心のある者(吉岡)なのかを審査しに吉岡のマンションを訪ねます……。
・二番目のお客様
単身赴任中の中年サラリーマン・吉田(光石研)です。家族はなればなれに暮らすうちに一人娘はすっかり年頃になって親父をさけだし完全無欠な孤独となった吉田にレンタしたネコは「臭いニオイ」フェチな子猫ちゃん……。
・三番目のお客様
ごっつう暑いある日、近所のレンタカー屋に掲げられた「ハワイ旅行が当たる」というノボリにつられて入店。そこにたった一人ぼっちで勤務している女店員・吉川(山田真歩)は、レンタカーモデルAランク~Cランクまでを料金設定を懇切丁寧にスーパーマニュアル通りに流暢にしゃぺくるも、自分はCランク人間だと思いこんでいるのです。そんな吉川にサヨコが貸し出したのは、きゃわゆーい三毛猫です。借用期間は「待ち人きたる日」まで。
・四番目のお客様
ある日、若い男子とすれ違います。見覚えのある彼は超ウソつきだった中学の同級生・吉沢(田中圭)でした。彼は、明日インドにたつのでそれまでメス猫を貸してちょーだい!とサヨコに頼みます。
さーて、サヨコはどうする?私たちふたりどうなるの♪?
テクノロジーの発達も影響しているであろうリアルが充実していない現代人の寂しさという黒い穴を埋めてくれる本作品。
さびしいままなんていけません。一瞬だけ、声を出そう。
対人関係に、忙しいから、腹立つなぁ、うざぁ、 と思ってしまう、その時にこそ観たい、本年を代表する日本映画のこの逸品。おためしください。
4月に開催されるイタリアのウディネ・ファー・イースト映画祭のコンペティション部門正式出品も決定しています。
■2011年 日本映画/上映時間:110分/監督・脚本:荻上直子/出演:市川実日子、草村礼子、光石研、山田真歩、田中圭、小林克也 ほか
オフィシャルサイト:http://www.rentaneko.com/
(中野 豊)