レポゼッション・メン - 渡まち子

◆高額商品を売っては儲ける企業の企みとは別に、臓器レベルで自分の身体や能力をコーディネートするセンスは人類の未来志向を示唆していて面白い(60点)

 人工臓器によって長寿を“買う”人類の欲望に手痛いしっぺ返しをクラわせる異色SFだが、終盤にどんでん返しが用意されていてる。近未来、人工臓器によって健康と延命が可能になった世界。ユニオン社は、ローンの返済が滞るとレポゼッション・メンという臓器回収人を送り、強制的に人工臓器を取り立てていた。生きたまま回収するその作業は、債務者にとっては死を意味する。腕利きの回収人・レミーは、ある出来事によってユニオン社の最高額商品である人工心臓を埋め込まれ、多額の借金を背負い、回収する側からされる側に。これは誰かの罠なのか、ユニオン社の陰謀か。謎の女性債務者ベスと共に真実を探ろうとするが…。

 アレックス・コックス監督の「レポマン」と何か関係があるのかと思っていたら、物語はまったく別物。回収するものは車ではなく人間の身体に埋め込まれた人工臓器だ。当然、かなりハードな流血シーンがあるので覚悟してほしい。甘い言葉でローンを組ませ非情な手段で回収するその様子は、まるで闇金融。その臓器を買えるもの買えないものの差異は格差社会に拍車をかける。生きたまま臓器を取り出す作業を何の罪悪感もなく“仕事のノルマ”としてこなす主人公レミーと親友のジェイクの心は、相当病んでいる。ただし、物語はそんな社会派の側面は深く追及せず、なぜレポ・マンであるレミーに人工心臓が埋め込まれたのかという謎を追うアクション・バイオレンスの色合いが濃い。ユニオン社の陰謀ではないかとの疑問から社に侵入し、自分で自分の身体を切り裂いて記録を抹消し借金を踏み倒すという荒業に絶句。「それでいいなら最初からそうしたら?!」とツッコミを入れようと思ったそのときに、すべてをひっくり返す驚きが待っていた。結局、人間の幸せは、自らを充足させる幸福感なのか。興味深いのは女性債務者ベスの描写だ。彼女は身体に10個以上の人工臓器を持つが、歌手であるためか、人工臓器によって耳の感覚を人一倍鋭くしている。高額商品を売っては儲ける企業の企みとは別に、臓器レベルで自分の身体や能力をコーディネートするセンスは人類の未来志向を示唆していて面白い。ミュージック・ビデオ出身という新鋭ミゲル・サポチニク監督のテンポのいい演出が、ダーティな“ハッピーエンド”も含めて、シャープな印象を醸し出していた。

渡まち子

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