レディ・チャタレー - 福本次郎

◆自分の裸を鏡に映し、女としての価値を見定めるヒロイン。下半身不随の夫とのセックスレス生活の中で抑えられた衝動と女としての悦びを取り戻していく心理が、色づく木々や緑濃い草といった森の自然を背景に細やかに描かれる。(60点)

ネタバレ注意! この批評は結末に触れています。

 自分の裸を鏡に映し、女としての価値を見定めるヒロイン。森で偶然見かけた男のたくましい背中に過剰なほど胸を高鳴らせ本能に火がついてしまった彼女の行為には、まだまだ肉欲を断ち切れない女の性が色濃く反映されている。抑えられた衝動が鬱積し心を圧迫するが、それが解放されたときの生き生きとした表情。下半身不随の夫とのセックスレス生活の中で、女としての悦びを取り戻していく心理が、色づく木々や緑濃い草といった森の自然を背景に細やかに描かれる。

 コンスタンスは障害者の夫を介護する日々。ある日、森でひとり暮らす番人・パーキンと出会い、彼の元に通うようになる。パーキンとの関係が噂になり始め、夫の知るところとなるとコンスタンスは夫と別れパーキンと一緒になることを考え始める。

 人妻が不倫に走る動機、女としての魅力を失うことへの恐れ、そして開き直ったときの強さ。ため息と激しい息遣い、大胆さと放心、不倫密会がまだ背徳の香りを残していた頃の雰囲気が濃密だ。ふたりは最初のうち、下半身だけで交わる。それは単に性欲を満たすだけの行為のよう。初めてお互いに裸になってベッドを共にするまでのいかに長いことか。性だけの関係が愛に変わった夜、コンスタンスの気持ちは強固なものとなる。雨の中を裸で走り回りお互いの体を花で飾るシーンは、その後の運命を知っている楽園のアダムとイブのようだ。

 妻の座や女性の地位が低く、労働者が搾取されていた時代、結婚した女性が他の男と交わることは大スキャンダルだったはず。だからこそ、夫は自分のプライドを守るため、彼女の「子供が欲しい」という考えに寛容を示す。そして、最後になってやっとこの映画は能弁になり、パーキンとコンスタンスはお互いの気持ちを確認しあう。初めて自分の強烈な気持ちを打ち明けるパーキンの言葉に、禁じられた愛だけが持つきらめきがちりばめられていた。

福本次郎

【おすすめサイト】