ルーパー - 青森 学

過去の人間が未来の自分を殺さなければならないという設定の面白さが、良くも悪くもこの作品全体の評価を決めている。(点数 78点)


Copyright 2011, Looper, LLC

近未来。タイムトラベルが可能になった世界ではその影響力の強さから公権力がタイムトラベ ルを禁止したためアンダーグラウンド化し、タイムトラベルは犯罪組織のみ利用するようになったというのが物語の背景。

キリスト救世主の逸話、マタイ福音書によるとヘロデ王は新たなユダヤの王がベツレヘムに生 まれた予言を聞いて二歳以下の男児を皆殺しにしようとした。
この映画でもループを閉じてタイムトラベルを終結させようとしたレインメーカーを過去にさかのぼって殺害しようとした構造はこのエピソードに酷似している。

『ターミネーター』もそうだったが、この作品もキリスト教文化の強迫観念から逃れることが 出来なかった。
この作品はターミネーターの変奏バージョンと言えそうだ。

ラッパ銃といわれる処刑専用の銃が至近距離しか撃てない伏線がさまざまシークエンスで制約 的に機能しており、そのために主人公が窮地に陥ったり、また制約の裏をかいてピンチから脱出したりとストーリーに起伏を与えている。

現在の自分を生かすためであっても、未来の自分を殺害しようとする主人公の動機は未来の自 分を徹底的に他人事として捉える主人公に現代人にまん延する個人主義の考え方が濃厚に表れており、軽い現代批判も含まれている。

佳境では自己犠牲の精神を賛美するなどキリスト教の呪縛から最後まで逃れられなかった。
ハ リウッド映画にありがちなのだが、原典を聖書に求めるケースが多い。
思いつくものでもキアヌ・リーブスが主演した『コンスタンティン』も終末思想が濃厚に表れていたし、SF映画の傑作『マトリックス』もそうだった(ザ イオンなんて名前はシオンの英語表記であってキリスト教的であったし)。
そういう点でハリウッド映画はキリスト教の洗脳装置ではないのか と訝しく思う時がある。

物語のなかでもっとも影響力のある国は中国のように描かれているのだが、世相を反映してい るようで興味深い。
一昔前の『ベスト・キッド』では空手がキーポイントであって日本が世界から注目されていた時期だったのだが、ジャッキー・チェンが師匠役を演じたリメイク版の『ベスト・キッド』では舞台は中国に移っており、現在では中国のプレゼンスが相当強くなってき ている。
ずいぶん昔になるが日本の自動車メーカーの会社文化を皮肉ったコメディ映画『ガン・ホー』なんて隔世の感がある。
ちょっと寂しい 気もするがこれからも中国を取り上げた作品は『ルーパー』に限らず続々と登場していくこと になるだろう。
只、イデオロギーではアメリカと対立する中国をハリウッドはどう描いていくのか興味は尽きない。

青森 学

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