◆道化師のキャリアを活かしたパントマイム風のギャグが最大の魅力(70点)
ベルギー出身の道化師カップル、ドミニク・アベル&フィオナ・ゴードンが主演し、ブルーノ・ロミと三人で監督、脚本を務めた長編第二弾。
ドム&フィオナ夫妻は、ベルギーの田舎町で小学校教師をしている。ダンスが好きなこの夫妻はダンス大会に出場し、優勝する。だが、その帰り道に交通事故に遭い、フィオナは片脚を切断するハメになり、ドムは記憶喪失となってしまう。挙句の果てには、職を失い、自宅を火事で失ってしまうというバッド・デスティニーが降り掛かり、ドン底に突き落とされてしまうが……。
道化師のキャリアを活かしたパントマイム風のギャグが最大の魅力であり、セリフやBGMを極力排した古典的コメディーを彷彿させるのが最大の特徴である。家が火事になるシーンでもニヤリとさせてくれるし、ブルーノ・ロミ扮するパン好きのオッサンがドムのパンを奪うべく衣服を脱がしてしまうシーンは、ナンセンス・コメディー風でしっかりと楽しませてくれる。
ツッコミを入れたくなるシーンが多い。だが、出来の悪い映画で観られがちなマイナスポイントとなるツッコミ所が多いというモノではない。劇中で繰り広げられる数々のギャグに対して「なんでやねん!」とか「おいおい!!」という感じで観る者がお笑いやコメディーのツッコミ側になって楽しめるということなのである。
劇中の悪い出来事をありきたりの描写で魅せつけて観る者を同情させたり悲しませたりせず、あえて面白可笑しく描いて笑わせ、印象付けるというのが本作が持っている最大の好ましいポイントである。
軽快なリズムに合わせたダンスシーンも魅力的でゴキゲンな気分にさせてくれるし、タイトルの犬やカタツムリのイラスト(フィオナが描いたとの事)も可愛げがあって好印象だ。
(佐々木貴之)