リメンバー・ミー - 福本次郎

911が喪失ではなく再生のきっかけとなる、そんな映画はこの作品が初めてではないだろうか。(点数 60点)


(C)2010 Summit Entertainment, LLC.

兄の自殺を発見した男とチンピラに母を殺された女。近親者の死を目
の前で体験したふたりは心の空白を埋めるかのように求めあうが、恋
の喜びに浸る一歩手前で、先に逝ってしまった人への遠慮なのか、気
持ちに一線を引いてしまっている。映画は、ふたりの出会いと別れ、
やり直しの過程で “いまを精いっぱい生きる” 大切さを描く。無駄
な命などひとつもない、無駄な行動などひとつもない。誰かを愛し、
他人の役に立つことで人生は意味を持つのだ。

【ネタバレ注意】

刹那的な生活を送るタイラーはルームメイトに唆され、以前自分を逮
捕した刑事の娘・アリーに声をかける。ふたりは急接近し、父と大喧
嘩したアリーはタイラーの部屋に転がり込んでくる。

タイラーは兄の死後も仕事一筋の父と折り合いく、アリーは母亡きあ
との濃密過ぎる父娘関係にウンザリしている。父との距離感をうまく
保てない若者たち、といってもふたりともティーンエージャーではな
く成人した大人、世代間の価値観の違いに反発はするがそれを乗り越
えていこうとする気概が希薄なのは、死をあまりにも身近に経験した
せいなのだ。

ふたりの物語は2001年5月のマンハッタンから始まるが、当然近い未来
に911が彼らとその家族の運命に深くかかわってくるのは予想される。
だが、911が喪失ではなく再生のきっかけとなる、そんな映画はこの作
品が初めてではないだろうか。

福本次郎

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