リサとガスパール-とびきりキュートなパリの住人- - 渡まち子

◆ほとんど夫婦漫才(めおとまんざい)の世界(55点)

 フランス発の人気絵本が初のアニメーション映画になった。ウサギでもイヌでもない不思議な生物リサとガスパールのキャラは、シンプルで可愛らしい。お茶目で元気な女の子リサと心優しい男の子のガスパールは、大親友。パリに住んでいて、人間と同じ学校に通っている。人間の友達はいっぱいいるけれど、2人は特別の仲良し“永遠の友達(トワトモ)”なのだ。そんなリサとガスパールは、今日もいたずらをして思わず叫んでしまう。「ひゃー、やっちゃったー!」。

 原作者は文を担当するアン・グッドマンと絵を担当するゲオルグ・ハレンスレーベンの夫婦。油絵で描かれた原画のタッチは、ぬくもりを感じさせるやわらかい雰囲気で、好感度大だ。ファン待望の初映画化となる本作は5つのエピソードでつづられる。ガスパールの兄さんのシャルルが作ったロケットを壊してしまう「スペースロケット」、リサとガスパールのクラスで飼うことになったモルモットが行方不明になってしまう「ちいさなともだち」、シャルルの凧が強風で飛ばされ街中を走り回って探す「凧あげ」、学校で手品をすることになったリサとガスパールがケンカしてしまう「マジックショー」。どれも好奇心一杯で暴走してしまうリサに、ガスパールがひきずられる格好で微笑ましい。このパターン、どこかで見たことがあるなと思ったら、フラッシュ・アニメの古墳ギャルのコフィーと幼馴染の墳丘墓ダニエルの関係に似てるのだ。可愛くてジコチューでメゲないリサ、彼女にやきもきしながらもいつもさりげなくフォローする優しいガスパール。ほとんど夫婦漫才(めおとまんざい)の世界である。毎日の暮らしに、明らかにヘンな生物が混じっているのに、まったく意に介さない人間たちの懐の深さも良い。4つのエピソードがどれもいたずらが中心の小話風なのに対し、映画オリジナル・ストーリーである「リサのいもうと」は、ちょっと泣かせる。リサは妹が生まれた時、お母さんは妹が可愛くて、もう自分をかまってくれないと思い込み大ショックでキレ気味。赤ちゃんを敵視するリサが、やがて心を開いて妹への優しさに目覚めるエピソードだ。上手いのは、これが回想形式で描かるため、リサの成長を実感できること。映画そのものはあくまでも子供向けだが、独特の絵柄が何ともラブリーで、いつまでも見ていたくなる。実在のパリの街のスポットが舞台で、登場するカフェやファッションなど、何気におしゃれ。癒し系アニメでのんびりしたひと時を過ごしたい人にお勧めしたい。

渡まち子

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