ラーメンガール - 前田有一

西田敏行がハリウッドデビュー(45点)

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 『ラーメンガール』は、西田敏行のハリウッドデビュー作品だが、その使い方を完全に間違っているなど、作り手の認識不足があらゆる面で目立つ。

 恋人を追いかけ日本にやってきたアビー(ブリタニー・マーフィ)。ところが肝心の彼氏はそんなアビーがウザったくて、あっさり振ってしまう。途方にくれたアビーは、赤提灯に誘われるように目の前の薄汚いラーメン店に入る。ところがそのラーメンのあまりの美味しさに感激、言葉がまったく通じないのに翌日から無理やり弟子入りする。ガンコにもほどがある店主(西田敏行)の理不尽なシゴキにも耐え、彼女は必死に修行に励むのだが……。

 西田敏行の小技が冴え渡り、彼がボヤクだけで場内は大笑。ところがこの監督はそんな西田の持ち味を生かすことができず、彼の生来持つ好感度を下げるようなことばかりする。西田演じるガンコ店主は、ヒロインが思わず訴えるとおり「虐待」の限りを尽くし、何の説得力もないイジメのような修行をおしつける。

 それはたとえば、素手で和式の便器を洗わせてみたり、暴力を振るったりといったもろもろのこと。言葉の通じぬ外国人が突然弟子入りなどといってくれば、その本気を疑う気持ちもわからぬではないが、これはいくらなんでもやりすぎだ。最初は笑っていた観客も、みるみる引いていくのがわかる。本作はこういうやり方ではなく、もっと西田の「どこか憎めない」天性の才能を生かし、日米文化ギャップのコメディとして作るべきだった。

 だいたいこのガンコ親父は、四六時中タバコをふかし、トイレも汚い(あんなもん、素手で洗えるか!)。つまり、料理人としての基本が欠けているように見える。先ほど書いたヒロインイジメのような修行にしても、こんな人物が言うのでは説得力がない。

 これがたとえば、観客をなるほどとうならせるラーメン作りの基礎のようなものを、トリビアを交えてこの男が披露するような場面を前半に織り交ぜておけば、観客はこうした悪印象を受けずにすむ。それをやらないのは、監督らがラーメン作りについて、十分にリサーチをしていないからに他ならない。ようは、手抜きをしているということだ。

 その証拠のひとつとして、この映画のBGMがなぜか中国風という事実も傍証としてあげられよう。当たり前の話だが、ラーメンは中国料理ではない。そんなことは、日本人なら誰でも知っている。なのになぜ中華風の音楽など使うのか。そこに認識不足あるいは誤解はなかったか。

 アイデアは悪くないが、いかんせん煮詰め不足。行列ばかり長くて、びっくりするほどまずかった新宿の某有名店のような、残念感ただよう一品であった。

前田有一

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