ラビット・ホール - 福本次郎

繊細なヒロインの心情を、ニコール・キッドマンは時に感情を爆発させてリアルに演じきる。(点数 60点)


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身近な人々の気配りが癪に障り、慰めの言葉が非難に聞こえる。己を
責めぬいた揚句、もうこれ以上傷つきたくないと防衛本能が他人の些
細な言動に過剰反応し、つい彼女を攻撃的にしてしまう。自分の胸中
を分かってほしい、でも誰にも理解できるはずがない。そんな繊細な
ヒロインの心情を、ニコール・キッドマンは時に感情を爆発させてリ
アルに演じきる。世界中の悲しみをひとりで背負っていると思い込ん
でいて、確かに同情の余地はあるのだが、むしろイヤな女を演じて現
実から逃避しようとする姿が痛々しい。

【ネタバレ注意】

ひとり息子・ダニーの死から立ち直れないベッカは、妹の妊娠を喜べ
ず、夫のハウイーと共にグループセラピーを受けても馴染めない。あ
る日、町でダニーを死なせた少年を見かけ、密かに後をつける。

なんとか過去と折り合いをつけようとするハウイーや実母、家族の言
葉尻をいちいち上げつらい、議論を吹っ掛けるベッカ。その、回りを
不愉快にする負のオーラは、なぜか少年の前では抑制されている。何
度も尾行し声をかけようとするが、何を話したらよいかわからない。
ところがいざ対面すると、少年こそが不幸の原因なのに、彼女は恨み
や怒りをぶつけるどころか、彼の謝罪に対して心を開いてしまうのだ。

そして、少年もまたダニーの命を奪ったことで深く傷つき我が身を責
めている。ベッカが初めて同じ思いを共有できた相手が加害者だった
皮肉が、ままならない人生を象徴している。

福本次郎

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