ラビット・ホール - 樺沢 紫苑

もし将来、私が「グリーフワーク」について本に書くことがあれば、間違いなくこの映画を引用することになるでしょう。(点数 90点)


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映画『ラビット・ホール』を見ました。
 ニコール・キッドマンがアカデミー主演女優賞にノミネートされていたので、ずっと見たいと思っていましたが、見逃さないでよかったです。

 息子を交通事故で亡くした両親の物語。
 悩み、苦しみ、そして時に感情的になり怒りを表明する。
 苦悶する夫婦をニコール・キッドマンとアーロン・エッカートが好演します。

 まさに、「映画の精神医学」で取り上げるべき作品、とでも言いましょうか。

 死別などによって愛する人を失う。
 そして、その死を受け入れ、回復していく作業を「グリーフワーク」と言います。

 もし将来、私が「グリーフワーク」について本に書くことがあれば、間違いなくこの映画を引用することになるでしょう。

 家族の死を受け入れ乗り越えていく作品は今までたくさん作られていますが、この映画では「グリーフ(悲嘆)」は、そう簡単には乗り越えられない。
 非常に大きなハードルとして、立ちはだかるのです。
 
 見ていて苦しくなりますが、息子の死を簡単に乗り越えることなどできるはずがないのです。

 ドラマティックな感動はありませんが、淡々と描かれる現実は心にグサグサ刺さります。

 映画が終わりクレジットに変わった瞬間に、穏やかな涙が流れました。

 同じく家族の死を経験している役を演じるダイアン・ウィーストとサンドラ・オー(『サイドウェイ』)も実にうまい。
 この二人の脇役のおかげて、映画が圧倒的に深いものになっています。

 心の傷を癒す。トラウマの克服。
 言葉で言うのは簡単ですが、現実には難しく、そして長い時間を要するのです。

 そんな厳しい現実の中で、それでも寄り添い続ける夫婦愛に救いを感じます。

樺沢 紫苑

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