ラスト5イヤーズ - 青森 学

アメリカのミュージカルは日本にとっての敷島の道 (点数 83点)


(C)THE LAST FIVE YEARS THE MOTION PICTURE LLC

恋愛と歌は相性が良い。この作品はあるカップルの出会いと別れをふたつの時間軸を使って物語が構成されている。
登場人物は基本的に主人公のキャシー(アナ・ケンドリック)とジェイミー(ジェレミー・ジョーダン)の2人のみ。

彼らの想い出の断片が接ぎ合わされてひとつのパッチワークが完成する。

ミュージカルはストーリーを追うのが若干得意ではないようだ。ミュージカルが本領を発揮するのは昂揚する登場人物の感情表現だ。
言ってしまえばこれ一点に尽きるように思う。なので、この作品でもストーリーは断片化されており、各々の記憶が歌と共に想い出に彩りを添えている。
ミュージカルはストーリーを追うのに最適化されていないという制約を逆手に取ってエピソードをフラグメント化する手法は、欠点を逆にメリットに変えてしまう点において鮮やかであると感嘆の念を禁じ得ない。
この作品の構成はミュージカルの特性を知り尽くしているからこそ至った手法であり、緻密な計算の上に生まれた作品なのである。
日本ではいにしえから、和歌という恋の歌があるが、それに相当するのはアメリカではミュージカルなのかもしれない。
恋する気持ちを旋律に乗せると、それを観る者はいたく心を動かされるのである。
ちょっと世俗的なことを云えばカラオケであれほど恋の歌が唄われるのも、想いを寄せる人への気持ちは歌にマッチするからだ。
ひとは恋する気持ちを歌の調べに乗せて高まる感情を昇華させる。
ミュージカルはその最たるものであり、『ラスト5イヤーズ』は凡百では到達しえない結晶化された恋愛と言っても言い過ぎではないだろう。
恋愛をテーマにしたミュージカルはやはり王道のように思う。

ラストシーンが面白い。
2人が歌い合うのだが、キャシーは出会いの喜びを、一方でジェイミーは離別の哀しみを歌うのである。
相反する感情を歌うのにそれがハーモニーを奏でている。なにやら暗示めいていないだろうか。出会いも別れも含めて彼らにとって愛しむべき時間であったというべきか。

作品の説明では、女は別れから出会いまでを遡行し、男は出会いから別れを辿るとあるが、映画の中でちりばめれられるエピソードはキャシーとジェイミーを中心に進行し、そのどちらの視点で描かれているものなのか明確では無いので、彼らの5年間の生活において一点交差する瞬間を除いてとりわけ特別なシーンは無い。
すべては出会いと別れが交差するラストのためにあると言っても良い。

青森 学

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