ラスト・ソング - 福本次郎

◆殻にこもっていたヒロインが、濃密な人間関係に心地よさを感じる過程は、米国南部の観光用広報フィルムのよう。ウミガメが産卵する海岸、ビーチバレーを楽しむ若者、水族館とショッピング、すべてが思い出作りの演出に見える。(40点)

ネタバレ注意! この批評は結末に触れています。

 家族と離れて暮らしていた父と過ごした夏の日々。固く閉ざしていた少女の心が徐々に明るさを取り戻していく。あらゆる大人はうざい、ナンパしてくる男も目障りなだけという自分の殻にこもっていたヒロインが、小さな街の濃密な人間関係に心地よさを感じていく過程は、舞台となった米国南部の観光用広報フィルムのよう。ウミガメが産卵する美しい海岸、ビーチバレーを楽しむ若者、水族館とショッピング、すべてが思い出作りのための演出に見えるほど安っぽい。

 夏休みを父と過ごすために海辺の町にやってきたロニー姉は、早速父親と口げんか、コテージを飛び出す。ビーチで知り合ったウィルという地元の青年に声をかけられるが無視、一方でヒッピーの少女と仲良くなる。ある日、ウミガメの卵を見つけたロニーは孵化まで見守る決意をしパトロールを呼ぶが、やってきたのはウィルだった。

 両親の離婚がグレた原因だが実は寂しいだけで、ウィルと親しくなった途端に父とも口をきくようになるロニー。親子の断絶をいかに修復していくかを期待させて、イケメン男子とデートするとすぐに機嫌が直る彼女の現金さには恐れ入る。逆にロニーの弟は父との再会を喜び、作業を積極的に手伝うだけでなく姉と父の軋轢に心痛める、ありえないほど利発な出来過ぎた息子。父も教会の修復にかかわるなど、ロニーの周りを固めるのは善良な人間ばかりだ。こんなナイスガイたちに心配されたら、反抗的な態度を取り続けるのもアホらしくなるだろう。

 そんな時、元気だった父が突然吐血、末期がんが明らかになる。それは親子の絆をさらに深め、父が書いた手紙を読んで、ロニーは自分をこれほどまでに愛してくれていた父の気持ちを知る。そして父の葬儀では遺作となった曲を披露するなど、ロニーはすっかり親思い娘に変身。しかもジュリアード音楽院に入学して父の遺志を継ぎ、コロンビア大に編入したウィルとNYでやり直そうとする。どこまでもご都合主義が優先する、子供だましの作品だった。「親孝行したいときには親はなし」の教訓だけは生きていたが。。。

福本次郎

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