ライラの冒険 黄金の羅針盤 - 岡本太陽

主人公がパラレルワールドを旅する冒険ファンタジー(70点)

 現在全米で物議を醸している映画がある。『ライラの冒険 黄金の羅針盤(原題:THE GOLDEN COMPASS)』というイギリス人作家フィリップ・プルマンの小説を映画化したファンタジー作品だ。あるキリスト教の団体等はこの映画が反キリスト教を彷彿させる内容で、無神論を推進するものだとして、ボイコットを呼びかけている。この映画は小説同様、3部作の1作目。そして2作目以降は『神秘の短剣』『琥珀の望遠鏡』と続く、主人公がパラレルワールドを旅する冒険ファンタジーだ。第1作目の『黄金の羅針盤』では11歳の少女ライラ・ベラクアが主人公だ。

 この世には我々の世界に良く似ているが、どこか違う不思議なパラレルワールドが幾つも存在する。主人公ライラ(ダコタ・ブルー・リチャーズ)の住む世界は、人には必ず「ダイモン」と呼ばれる動物や虫の姿をした自分の分身を側に持っている。このダイモンは、人が大人になるにつれてその姿はある一種の動物に定まるが、人が子供の時には、その人の成長や気分で姿を変えることができる。

 オックスフォード大学ジョーダン学寮に住むライラの周りで子供達が行方不明になるという事件が相次いでいた。この事件にはコブラーという謎の組織が関係しているという。ライラはある日、伯父のアリスエル卿(ダニエル・クレイグ)や学寮長の話を耳にしてしまう。北の空からダストと呼ばれるものが地上に流れ込んで来ているという。それが何を意味するのかライラは知らないが、どうやらそのダストはダイモンと関係がある様だ。そしてアスリエル卿はライラを残し、1人北の大地へと去って行く。そんなライラの元にコールター夫人(ニコール・キッドマン)という女性探検家が現れる。彼女はライラを旅の助手として雇うという。寮を去るのは少々寂しいが、冒険にわくわくしているライラの部屋に学寮長がやって来てある物を手渡す。それは真理計(アリシオメーター)と呼ばれる金の羅針盤の様なものだった。そして学寮長はライラに忠告する、これを持っている事は誰にも言ってはいけないと。コールター夫人にもだ。そして旅立ちの時、ライラは親友ロジャーが見送りに来てくれると信じていたが、彼は来なかった。ライラは彼の身に何か起こったに違いないと確信する。彼も消えてしまったのか?ライラは決意する、ロジャーを絶対に助ける、と。これから彼女の想像を超える物語が始まる。

 『ライラの冒険 黄金の羅針盤』の監督を務めるのはクリス・ウェイツ。『アバウト・ボーイ』が高く評価された映画監督だ。彼が今まで監督した作品はコメディ色が強く、なぜ『ライラの冒険 黄金の羅針盤』を彼が撮ったのかあまり理解出来ない。『ライラの冒険 黄金の羅針盤』は大人のファンタジーなので、ギレルモ・デル・トロあたりに撮らせた方が良かったのではないだろうか。『神秘の短剣』『琥珀の望遠鏡』は是非監督交代を望む。

 キャストは超豪華。ダニエル・クレイグ、ニコール・キッドマン、エヴァ・グリーン、サム・エリオット、トム・コートニーは人を演じているが、この映画の中にはダイモンと呼ばれる生き物が必ず人に寄り添っており、それらには声の出演者がいる。イアン・マッケラン、キャシー・ベイツ、フレディ・ハイモア、クリスティン・スコット・トーマス等声の出演者だけでも錚々たる俳優を揃えている。そして忘れてはいけないのが、主人公ライラ役のダコタ・ブルー・リチャーズ。彼女は映画初出演ながら堂々たる演技を披露している。とても映画初出演とは思えない大物っぷりである。

 この『ライラの冒険 黄金の羅針盤』の何が一番興味深いかというと、それはやはり世界観ではないだろうか。この世にはパラレルワールドがいくつも存在し、わたしたち以外にも人が存在し、生活を営んでいる。そんな幻想的だが、わたしたちの世界が存在するならば、他にもいろんな世界が存在してもおかしくはないと思わされる内容が興味深い。またダイモンの存在が人々の好奇心を掻立てる。ダイモンの姿はその人の性格によって左右されるので、自分だったらどんな生き物だろうとか、ダイモンがいたらいいな等、想像を膨らます事ができる。

 作品の雰囲気は同じニューラインシネマ製作の『ロード・オブ・ザ・リング』よりは、今年公開された『スターダスト』や『ナルニア国物語』に近いかもしれない。『ライラの冒険黄金の羅針盤』には戦闘シーンがあるものの、『ロード・オブ・ザ・リング』のオドロオドロシさがないので大人向けファンタジーのはずが、子供向けファンタジーの様に感じられる。小説でも2作目と3作目の方がよりワイルドで深いので映画の続編が非常に楽しみである。是非もっと強烈な作品にしていただきたい。

 ファンタジー映画には世界観を作り出す為にCGは欠かせない。この作品にCGがふんだんに使用されている。おそらく半分はCGだろう。特にダイモンは全部CGで、一番印象に残っているのはニコール・キッドマンのダイモンである金色の毛の猿。このゴールドCGモンキーが嫌な野郎でライラを付け回すのだ。そしてニコール・キッドマン自身もこの映画の中ではなんだか変だ。エレガントでミステリアスな役のはずだが、どちらかというと変なのだ。初めて彼女が現れるシーンは異様に体が輝いていて、『ベオウルフ/呪われし勇者』のアンジェリーナ・ジョリーを思い出させる。あれはCGだったんだろうか?彼女が出て来るときは「クスっ」と笑わずにはいられない。続編では彼女のより変態さを期待する。

 一番初めの話題に戻るが、キリスト教では特にファンタジー映画を批判する傾向にある。宗教は興味深いし、あってもいいものだと思う。しかし、ファンタジーを一方的に批判するのは疑問が残る。ファンタジーは人の想像の産物であるし、人の想像を豊かにする。また多くのファンタジー作品は現代を映す鏡であり、わたしたちの生きる世の中を皮肉っている。もはやファンタジーはただの子供向けではない。想像に欠く大人こそがファンタジーから学ぶ事があるのではないだろうか。

岡本太陽

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