ライフ・オブ・パイ/トラと漂流した227日 - 樺沢 紫苑

人は一人では生きられない!(点数 90点)


(C)2012 Twentieth Century Fox

私が予想していた作品とはかなり違いました。
それは、いい意味で裏切られたということ。

中年のインド人が語り出した奇想天外なサバイバルストーリー。
にわかには信じられない壮大な物語。
あるいは、ただの大法螺話なのか・・・。
私はこれを見て、『フォレスト・ガンプ』を思い出しました。

しかし、ここで語られるのは、『フォレスト・ガンプ』のような成功物語では
ありません。生きるか死ぬかの、壮絶なサバイバルストーリー。

『127時間』に通じるような、究極の限界状況は、
見ていて苦しくなる部分もありながらも、
少年のおおらかさが時に笑いを誘います。

そして、圧倒的に美しい映像は、「ファンタジー」という言葉がピッタリ。

一概にジャンル分け出来ない不思議な映画でありますが、
ヒューマンドラマとしてひきこまれ、
アカデミー賞で監督賞を含む、最多の4部門受賞したのも納得です。

凶暴なベンガルトラと一緒に227日漂流したという奇異な体験。
「なぜ少年は、生きることができたのか」というこの映画の
キャッチコピーになっていますが、私の答えは明快です。

少年は、「孤独」ではなかったから。

人間にとって最大のストレス、最大の苦しみは「孤独」なのです。
イジメがつらいのは、誰も助けてくれないという「孤独」に陥るから。
高齢者の自殺の原因もやはり「孤独」。

少年が一人で漂流していたら、「孤独」からすぐに「絶望」に至ったはず。
しかし、自分の命を脅かすトラと一緒にいたことで、
緊張感が生まれ、孤独に陥らず、最後にはトラとの「友情」のような
奇妙な関係にまで発展していくのです。

この映画を見ると、「生きる」ことの困難さがよくわかります。
「生きる」というのは、ただ黙っていてできるものではなく、
生きようと必死にならないと実現しないものなのです。

平穏で物質的にも満たされた現代日本で生活する私たちは、
ある意味「生きる」ことへの緊張感を失い、
「生きる」ことに必死になる必要がないために、
簡単に「生きる」努力を放棄してしまう。

結果として、先進国で最も自殺率が高い国になっているのなかな、
なんてもことも考えさせられます。

あるいはこの映画を見ると、「生きる」ことをあきらめないことの
素晴らしさも実感します。

単独のロッククライミングの最中に巨石にはさまれて
身動きがとれなくなる状況からの脱出を描いた『127時間』もそうでしたが、
限界状況において私達をたすけるのは、
「創意工夫」と「笑い・ユーモア」なのかもしれません。

人は一人では生きられない!
誰かと一緒にいるだけで、とても幸せなんだ。
『ライフ・オブ・パイ』を見て、そんな気付きを得ました。

樺沢 紫苑

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