メン・イン・ブラック3 - 青森 学

今作ではストーリーの基軸にタイムスリップを導入して、さらに大きくなったスケール感に圧倒される。(点数 88点)


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1作、2作の面白さが全くパワーダウンすることなく3作目に引き継がれている。
後半ではJ(ウィル・スミス)の生い立ちやK(トミー・リー・ジョーンズ)が何故寡黙なのかの原因が明かされていて、エピソードとしては1作、2作とも独立しているが、3作目までの文脈は連続している。なので、1作目から観直しておくと本作をより一層愉しめるだろう。

Jが高層ビルから飛び降りてタイムジャンプする1969年7月15日に若きKと出会うのだが、このKを演ずるジョシュ・ブローリンの演技が実に上手く喋り方がトミー・リー・ジョーンズに似ているせいか声まで似ているように思えてしまうのだ。

Jがビルから飛び降りてタイムジャンプをしている最中に大恐慌の時代を通過するのだけれどJを追うようにビルから飛び降りる男がいて、大恐慌が起きた時に飛び降り自殺をした人が跡を絶たなかった悲話に基づいており、笑ってはいけないのだが、巧みな笑いのセンスについニヤリとしてしまった。ブラックジョークも一級であった。

60年代のアメリカのファッション界を牛耳っているのは宇宙人たちで、世界の文化の源流を辿ると宇宙人がオリジナルであったりとなかなか社会風刺が利いていて面白い。真のオリジナルは存在しないと仄めかしているのだろうか。
60年代のMIBが持つアイテムが巨大なニューラライザーだったり、時代の徒花だったモノサイクルが登場したりといちいち芸が細かい。

69年のニューヨークでJとKがファッションショー会場で不思議な宇宙人と出会うのだけれど、この5次元の宇宙から来たという宇宙人、グリフィンが凄い。彼は多元宇宙を見渡すことが出来るけれど未来を変える事まではしなかったようだが、時間軸からは自由で時の観察者にはなれるようだ。
昔読んだブルーバックスで囓った程度の知識で何故グリフィンが5次元宇宙人であるのか自分なりにアレンジして解釈すると…
0次元は「・」で表すことができ、線の概念が無い。1次元は「ー」の線で表し連続した点の世界だ。0次元の人間にとっては0次元には無い1次元の「線」の概念を使って物を移動すると突然消えたように見える。これは1次元も同様で「面」の概念を使って物を迂回させて移動すると1次元の人間には物が消えたように見える。さらに進めると平面の世界である2次元に奥行きがプラスされると3次元になる。3次元の人間が物を持ち上げると平面の世界しか認識しない2次元の世界の人間には突如消えたように見えるのだ。ここからが少し話しがややこしくなるのだけれど、4次元の人間には箱に入っている物体をもう一つの概念(おそらく時間軸)を使うと箱を開けずに中身を取り出すことが出来るということになる(時間軸を使って箱の中身を取り出す時、3次元の人間には物体が突然見えなくなる)。つまり4次元の人間は空間に対して3次元の人間よりも自由になることが出来る。そして、グリフィンは時間軸よりも高次の軸を持つ5次元の世界の住人だから時間に対して自由に振る舞えるはずなのだ。空間を3次元の人間よりも自由に扱えるのが4次元の人間であると仮定するならば、時間を自由に扱うことが出来るのは5次元の人間であると推測することが出来る。グリフィンが何故5次元の生物でなくてはならないのかはブルーバックスを読んでも5次元について説明されている箇所を見つけることは出来なかったので憶測の域を出ないのだけれど、「空間」における4次元の優位性を考慮すると、「時間」により優位な立場に立てるのは5次元であると考えられないだろうか?映画の中でグリフィンを5次元の宇宙の生物と設定しているのは別にテキトーに言っている訳では無いのだ。作品中ではグリフィンは深夜の閑散としたシェイスタジアムで3ヶ月後に開かれるメッツvsオリオールズ戦を観戦している程度の力しか見せていないが、その気になれば5次元の生物ならば因果律を破壊してしまうほどの想像を絶した影響を世界に与えるはずなのである。極悪宇宙人のボリスがグリフィンの命を狙ったのはグリフィンが所持する地球防衛の切り札が理由だったのだけれど、グリフィンの存在自体もボリスには邪魔だったはずだ。ただし、時間を超越したグリフィンには5次元的に殺され無い限り、3次元的に殺されたとしてもなんの痛痒も感じなかったのだろう。素人の分析はこれぐらいが限界だがグリフィンを5次元宇宙人と映画で設定するのにはおそらく正当な理由がある。『MIB2』では宇宙の秘密をまだ仮説に過ぎない先端の物理学を用いて解き明かしているが、本作でもこの科学考証は相変わらず手を抜いていない。”神は細部に宿る”と言うが、スルーしてしまいそうな些細な設定すら疎かにしないところがMIBシリーズの魅力でもある。

MIBが関わる数々の事件は都市伝説にリアリティを与えるケースが多くて飽きさせない。街中に墜落した人工衛星や巨大怪魚に纏わる怪談など、背後にMIBの暗躍を匂わせる事件が観る者に膝をはたと叩きたくなる気分にさせられる。ただしあまりにも巧妙に描かれているためにユーモアと受け取らない人もいるかも。そのようなことからこのおとぎ話に強い説得力を持たせるので、冴えない現実を忘れて夢想の世界へ旅立つことが出来る点こそ、MIBシリーズが強く支持されている理由なのかも知れない。

本来、水と油の関係であるはずの非科学的な都市伝説と緻密な科学考証の融合こそが、このシリーズが永く人を惹きつけて已まない本当の理由だろう。

青森 学

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