メランコリア - 樺沢 紫苑

ラストシーンの衝撃に酔いしれた(点数 80点)


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あと一日で世界が終わるとしたら、あなたは何をしますか?

 映画『メランコリア』。すでに紹介したと思っていたら
まだ当サイトで紹介していなかったことに気付きまして、
もうすぐ公開終了なので、あわてて紹介させていただきます(笑)。

 キルスティン・ダンスト主演、で第24回ヨーロッパ映画賞にて
最優秀作品賞を受賞した『メランコリア』。

 見た人の前評判が高かったので、気にはなっていたのですが、
映画が始まって、手持ちカメラでかつアート系という
私の苦手パータンの映画とわかり、内心「しまった」と思いました。

 淡々と展開する前半30分が非常につまらないのです。
 キルスティン・ダンスト演じるジャスティンという女性の結婚式。
 しかし、ジャススティンがあまりにもわがまますぎて、
強い嫌悪感すら抱いてしまいます。

 しかし、話が進んでいくと、「あれ?」と気付くのです。
 ジャスティンは、心の病じゃないのか? 
 
 ひょっとして、パーソナリティ障害なのか・・・。

 映画前半に抱いた私の嫌悪感は、
精神科医である私のパーソナリティ障害に対する警戒反応
だったのかもしれない、と自己分析(笑)。

 ジャスティンの病理が深く描かれれば描かれるほど、
映画に引きこまれていきます。

 惑星メランコリアがあと数日で地球に衝突するかもしれない。
 そんな世界の終わりを前にして、「あなたは何をしますか?」
という映画かとおもいきや、
正確に言えば「世界の滅亡を前にして、あなたは正気でいられますか?」
という、もっと深い問いかけが心に刺さります。

 ジャスティンの姉クレア(シャルロット・ゲーンズブール)は、
良識のある自立した大人として描かれますが、
メランコリアの衝突を前に、パニック状態に陥っていきます。
 
 一方で、心の病を抱えるジャスティンは、世界の滅亡が近ずくにしたがい、元気になり、輝きを放っていくのです。
 その対比がおもしろい。

 そして、突然登場するキルスティン・ダンストのフルヌードには
ビックリしますが、その美しさにさらに驚かされます。

 「メランコリア」というのは、
劇中で地球に衝突する惑星の名前ですが、
もともと「憂鬱(ゆううつ)」という意味で、
精神医学の専門用語としてよく使われる言葉なのです。

 この映画を見るとほとんどの人は、憂鬱になる思いますが、
その憂鬱の中に「滅びの美学」とでもいうべき、
耽美的、自己破壊的、破滅的な「危険」と「美しさ」が
背中合わせになったギリギリの世界が描かれます。

 それは、精神医学的な自己破壊衝動、自己破壊欲求とも不可分で、
そこでパーソナル障害の自己破壊衝動の強い主人公ジャスティンを
設定していたのか、ということが腑に落ちた瞬間、
「ああ、こんなに深い映画なのか」と
ラストシーンの衝撃に酔いしれたのでした。

追伸 エンタメ系映画ファンには全くおすすめできませんが、
アート系映画ファンの一部が熱狂的に支持している理由はわかります。

樺沢 紫苑

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