メグ・ライアンから『ラブコメの女王』の称号を奪いとった、リース・ウィザースプーン主演のロマンティック・コメディ。
これで現在公開中のラブコメは、『トゥー・ウィークス・ノーティス』、『メイド・イン・マンハッタン』と合わせて3本という事になる。
『メラニーは行く』は、そのなかでは、メイドイン……よりは下だが、トゥーウィークス……よりはちょっと上、といった印象である。興行収入と、採点順位が正反対という点が泣けてくる。
さて、話を戻して本題の『メラニーは行く』。いったいどこに行くんだか良くわからない邦題だが、あえて原題を隠したというのはなかなか見事である。この文章の意味が知りたい方は、映画を見終わった後で、原題を見ていただければ良く分かるはずだ。
まちがって今見ちゃった人は、とりあえずその原題を脳内の隅に追いやってから、映画を見に行くと良い。そして、その後でまたこのレビューを読みにきてほしい。
リース・ウィザースプーンという女優だが、彼女は現在、ハリウッド人気ナンバー1女優である。もちろん、アメリカ人にとってという意味だから、彼女を見れば彼らの好みを窺い知ることができる。
この映画は、他のラブコメ同様、どっちの男を取るか?というのが、最大のテーマになっているわけだが、最後までどっちをとるかがわからないというのが、なかなか面白いポイントである。(これは日本の観客限定かもしれないが)
ちなみにこの映画、古典的ラブコメのように、『金持ちの男か、貧乏でも愛のある男か?』という単純な選択肢ではない。それで、結局貧乏男を取るなどという結末では、現代の女性は納得しないのである。
この作品では、『超大金持ちのハンサムと、普通に金持ちのハンサム男のどっちを取るか?』という選択肢が、ウィザースプーンことラブコメ女王様に提示される。
つまり、どっちの男を選ぼうが、主人公メラニー(という名の女性客)の幸せと、生活の安定は保証されるのである。「ヤダ?、アタシィ、どっちも素敵だから選べない?」と、メラニー(という名の女性客)が、悶えるのも無理の無い事である。
そして、映画のメラニーは結局ああいう選択をするが、見終わった後の女性客たちは、映画館を出た後、きっと同行者と熱論を交わすことになるのである。
「アタシだったらこうする」「いや、あれでいい」と。こうした楽しみを提供するのが、この手のラブコメの魅力の一つであるから、『メラニー』は、その点、上手くできている。また、こうした理由から、この映画は女性同士で見に行くのにも向いていると言えるだろう。
ラブコメは、『女性の共感を得なくては成立しない』という鉄則を考えると、この映画は非常に興味深い。現代の女性は、そこそこのお金がなければ、いくら愛があってもダメ、という想定が見えるからである。
私にとっては、「金より愛が勝つ」という、いつものラブコメ・ファンタジーの世界に逃避できるはずが、逆に厳しい現実を思い知らされた109分であった。
(映画ジャッジ)